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アトピーのうた

  • 第二展示場 Fホール | し-53〜54 (詩歌|俳句・短歌・川柳)
  • あとぴーのうた
  • 鈴木 諭
  • 2,000円

  • 私の作風が大きく変わった節目の作品がある。 アルバム『アトピーのうた』だ。
    私は、ブルーハーツが好きで音楽を好きになった。 会社を辞め、27歳で音楽活動を始めてから曲を作るようになったものの、最初はブルーハーツの真似事のような曲ばかり。
    ネット上で「ブルーハーツの二番煎じだ」と非難された事も。
    少しずつ、趣向が変わっていった。今から四年ほど前だろうか。 歴史や風土、日本文化への興味が強くなったのだ。
    一番最初のきっかけが何かを思い返すと、たぶん黒澤明の"羅生門"が発端だったと思う。
    昭和の日本映画を見漁った。 今村昌平、小津安二郎、溝口健二、市川崑など、数え切れないほどの作品を。
    文学にも触れるようになった。 太宰治、石川啄木、三島由紀夫、司馬遼太郎、谷崎潤一郎、挙げきれない。
    全くライブ活動をしていなかった時期、美術館にも通い詰めた。 葛飾北斎、川瀬巴水、小林清親、ゴッホ、棟方志功、琳派、マティス・・。
    自分のルーツへの興味も強くなった。 分厚い郷土史を読んだり、実家にある古い巻物に見たり触れたりした。
    何がどう作用したのかは、説明のしようが無い。 色んな影響が結晶化したのだろう。とにかく、変わったのだ。 自分でも分かった。
    変わった、と自覚した最初の曲が『犬の川』である。 或る日の夜、埃の舞うアパートの一室。深夜二時頃に唐突に頭に浮かんで来た。
    忘れていたようで、忘れ得なかった体験が。 川に流れゆく仔犬の姿が、頭に浮かんで来たのだ。
    私は流れ出てくるままに、書き殴った。詩を。
    不思議なものだ。人の記憶というモノは、探り始めると奥から忘れていたものが鮮明に浮かんでくる。
    今も覚えている。 庭で遊んでいた可愛い数匹の秋田犬の子供の姿を。
    おもむろに婆さんについて歩いた、農道の砂利道を。
    袋にギュウギュウと仔犬を詰め、放り投げる姿を。
    「キャンキャン」と泣き叫びながら、流れゆく仔犬の姿を。
    別に何者かになった訳ではないが、少なくともこの曲は私の人生を変えた。
    2022年の夏、"たらまガレージ"というお店の人達がこの曲を絶賛してくれたのだ。 それまで何処でも受け入れられなかったこの曲を。
    ぜんぶ、ぜんぶこの日から始まったのだ。私は。 色んな人への感謝の念が強い。最近。
    私を肯定してくれた、すべての人達への。
    辛い事も悲しい事も、泣いた事も、死のうと思った事も、生きようと思った事も、全てを昇華させられる"創作"というものに私は手を固く握って礼を言う。
    生きてて良かった。生きてて良かった。 『アトピーのうた』聴いて下さい。
    【曲目】 1.おさむ 2.おかし 3.誕生日(鯖缶がうまい) 4.月よ 5.今日僕は銀歯になった 6.羅生門に聞いて貰いたい話 7.東北の空 8.犬の川 9.炎と老婆 10.アトピーのうた

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