その生きものはそこにいる。 それだけが僕にわかることで、日常の中でだってきっとそうだ。 そこにいるということを信じる。 信じなければ消えてしまうほどのか細さで世界は立っていて、その小さな信仰こそが僕がここにいる証明なのだ。 そうじゃなければこの世界に不安なんてものはないのだ。 痛みなんてものはないのだ。 僕は生きものを見る。
生きものはゆれていた。 それははっきりとリズムを刻むようにも見えた。 植物の運動が人間の時間感覚では認識できないように、それはあまりに静かな動きに見えた。 それは速さの所為で止まって見えるホイールのようでもあった。 ゆれは世界に共鳴する。 あるいは世界に同調する。 生きものと世界がまるでひとつの心臓であるかのようにふるえる。 微動だにしない大樹のようにそびえ立つ。 葉がざわめき、根から血が駆け上がる。 地球の自転がゆれを起こす。 天体の周回がゆれを起こす。 音が聞こえる。 ゆれが聞こえる。 ふるえが聞こえる。 生きものがふるえているのか、世界がふるえているのかわからない。 しかしそこには確かに生きものが、ふるえながら留まっていた。 どこに流れていくこともできない、川面の光のように、小さくきらきらとふるえていた。
絵と言葉が交錯する地点にバスがやってくる。
画家岡部千晶の絵と詩人棚花俊の小説との豊かな重奏。
「ポケモン赤緑、ガナヒビ、岡崎京子、安川奈緒、ソフィカル、マームとジプシー、badbrains、トムは真夜中の庭で、様々な声がこの小説には宿っている。夜目真須果」
「1と0の二進法で表現できない息遣いが確かにこの本からは聞こえてくる。マーティスガコナルド」
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