こちらのアイテムは2024/5/19(日)開催・文学フリマ東京38にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京38公式Webサイトをご覧ください。

甘々なアイスコーヒーが良いに決まっている

  • 第一展示場 | A-53〜54 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • あままなあいすこーひーがよいにきまっている
  • 小鳥鳥子
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 90ページ
  • 600円
  • 2023/11/11(土)発行

  • 「くっくっく、これで奴をギャフンと言わせることができる」
     時刻は深夜。  当然、見ている者はいない。  仕掛けは上々。  笑みを浮かべながら、私はそっと戸棚の扉を閉めた。  明日が楽しみで仕方がない――。

     *  * *

    「やっぱり、高価な豆で挽いたコーヒーは美味しいなぁ」
     カズヤはほっこりとした顔で呟く。  その手には、コーヒーカップがあった。  コーヒーカップからは微かに湯気が立ち上っている。
    「マキはアイスコーヒーで良いの?」
     カズヤが声を掛けてくる。
    「私はアイスコーヒーが良いの」
     私の目の前には、透明なガラスのコップに入った涼しげなアイスコーヒーがある。  シロップとミルクを沢山入れた甘々のアイスコーヒーだ。  もう8月、真夏なのである。  部屋の中は冷房で涼しいとは言え、外では灼熱の太陽が地面を照らしている。  ホットよりアイスの方が良いに決まっている。
    「ホットの方が良いと思うんだけどね」
     ただ、カズヤはその辺りのことは理解してくれない。  コーヒーに限らず、温かい飲み物を飲んでいることが多かった。
    「それと、僕が淹れたコーヒーでアイスコーヒーを作っても良かったんだよ?」
     その言葉に少しだけ心が痛む。  カズヤが親切心でそう声を掛けてくれているのが分かるからだ。  しかし、私は今更揺るがない。
    「私は自分でアイスコーヒーを作りたかったから良いのよ」
     カズヤが飲んでいるホットコーヒーは、カズヤ本人が豆から挽いて作ったものである。  そして、私が飲んでいるアイスコーヒーは、私が豆から挽いて作ったものである。  ホットかアイスか、カズヤ作成か私作成かの違いがある。  そして、二つのコーヒーにはもう一つ、決定的な違いがあった。
    「マキの使った豆は安いやつだっけ?」 「そうよ」
     私が使った豆は、近所のスーパーで購入した安価なコーヒー豆である。
     ――と、カズヤは思っている。  しかしながら、じつは――逆なのである。
     昨夜、私はカズヤの購入した高価な豆と私が購入した安価な豆を入れ替えていた。  しかも、わざわざ見た目が似たような豆を選んで購入していたのだ。
     何故そんなことをするのか?  それは勿論、カズヤをギャフンと言わせるためだ。

ログインしませんか?

「気になる!」ボタンをクリックすると気になる出店者を記録できます。
「気になる!」ボタンを使えるようにするにはログインしてください。

同じ出店者のアイテムもどうぞ

電車にゆられて起結十時前青の鼓動葵たちさう春と、パリの回想遥けき果ての〇一の境界六月の花嫁やわらかな水きょうのご機嫌いかがほろ酔い帰路でしか言えないから甘々なアイスコーヒーが良いに決まっている家族がみんな隠しごとをしている四節の輪舞曲(ロンド)

「気になる!」集計データをもとに表示しています。