天鶩絨企画(@veludoproject)様にて開催されていたTwitter展示企画に寄稿した短編小説のうち、
2021年4月から2022年2月の参加作を一冊の文庫本にまとめました。
SFからせつない恋愛小説、現代をリアルタイムに舞台にした短編から時代劇風小説まで、思うさま好きに綴った九編を収録。
文庫化にあたり、加筆・改題しています。
【収録タイトル+冒頭公開】
○輪舞曲
──「おはよう、オルフェウス。今日はどんな歌を聞かせてくれるの?」
○ひとすくいの祈り
────かつん。
白陶のスプーンが、分厚いガラス瓶の底に触れた。
○懸想文仕掛之一幕
──アラおこうちゃん、おこんばんは。
ねえねえ、その袖に隠してるのは、ウチのキニシさんへの文でしょ?
○Crack a smile(「再び、の約定」改題)
────ああ、今日もまだ開いてない……か。
キラキラとソリッド、多少の差はあっても基本は灰色の高層ビルたちの陰になるところ、ひっそりと建っている三階建ての古ビル。その一階にある立ち飲み処『クラック』の前で、俺は溜息をついた。
○試赤の実
────我が後継にして息子の如きアダム・プレイバーンよ。どうか、私の生涯最後の告白を聞いてはくれまいか。
○誰がためのアンクレット
──『おお……おお、待ちわびていたぞ、サリナよ……!』
その低い男性の声は、紗莉那がガラス越しに目にしている一対のアンクレットからたしかに聞こえてきた。
○幸福ナルモノヘノ一考察
────調査官フェリシダーデより、長官ボヌールへの書簡
納得がいきません。
小職はテッラでの長い調査の旅を終え、つい七日前に調査報告書を提出したばかりです。それなのに、もう一度テッラにおける「幸福」実態調査を命じられるなどと。
○あかきこころね
──「そのハートのブローチはアンティークかい? いい品だね」
あわい午後の光が差し込む居間で、レナートはメイドのアルミナへと声をかけた。
○Dear Lint.
──背広に制服、訪問着にドレス。店の真ん中に鎮座する展翅板めいた机にうつ伏せにされた衣服を、穂積は持ち主の身体の線を探すようにして広げていく。