見覚えのある朝焼け色が縮こまっている。聞こえるのは、けいれんのようなすすり泣きだった。
静かに名前を呼ぶ。からだのふちから、怯えの色が広がってゆく。欠けて不自然なかたちになった左体側が、細くたなびいていた。
「食べられちゃった。ここのところ、はさみで。それとしっぽ。こわいしっぽ。でも、ぼくには毒があるから。まずくてはきだして、それで、どっかに行っちゃったんだ」
この日をさいごに、きみは、泣かなくなった。
「だいじょうぶだよ。ぼく、いきてるよ」
静かな海に暮らす三匹の生きものたち。
泳ぎが誰よりも得意な紫咲(ムラサキ)、洞察力にすぐれた碧央(アオ)、深い知識を持つ錫巴(スズ)。
彼らの海には古くからの言い伝えがあった。食べ物をめぐるあらそいがもとで、海にはさかいめができたという話だ。
「いつかみんなでさかいめを越えたい」と願う紫咲を中心に、彼らの生活はゆるやかに、しかしはっきりと変化していく。
また、海には「おくりの儀式」が存在する。おくりは特別なものではなく、皆に等しくやってくるものと言われているが、彼らにとっては……。
三匹がやがておくられ、海をめぐるまでのおはなし。
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