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アイオライトの水底

  • 第二展示場 Eホール | か-11 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • あいおらいとのみなそこ
  • やない ふじ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 211ページ
  • 900円
  • https://slib.net/107813
  • 2021/6/1(火)発行
  • 見覚えのある朝焼け色が縮こまっている。聞こえるのは、けいれんのようなすすり泣きだった。

    静かに名前を呼ぶ。からだのふちから、怯えの色が広がってゆく。欠けて不自然なかたちになった左体側が、細くたなびいていた。

    「食べられちゃった。ここのところ、はさみで。それとしっぽ。こわいしっぽ。でも、ぼくには毒があるから。まずくてはきだして、それで、どっかに行っちゃったんだ」

    この日をさいごに、きみは、泣かなくなった。

    「だいじょうぶだよ。ぼく、いきてるよ」


    静かな海に暮らす三匹の生きものたち。

    泳ぎが誰よりも得意な紫咲(ムラサキ)、洞察力にすぐれた碧央(アオ)、深い知識を持つ錫巴(スズ)。

    彼らの海には古くからの言い伝えがあった。食べ物をめぐるあらそいがもとで、海にはさかいめができたという話だ。

    「いつかみんなでさかいめを越えたい」と願う紫咲を中心に、彼らの生活はゆるやかに、しかしはっきりと変化していく。

    また、海には「おくりの儀式」が存在する。おくりは特別なものではなく、皆に等しくやってくるものと言われているが、彼らにとっては……。


    三匹がやがておくられ、海をめぐるまでのおはなし。

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