将来への不安、ある人への想い、あの頃から抜け出せない日々……。
思春期を迎えた中高生や大人になりきれない人たちの、揺れ動く感情を綴ったほろ苦い青春短編集。
『わたしの天使』
白い足を揺らしながら、私の知らない歌を歌う。
アイちゃんは天使になった。
冷たそうに見えるその脚に、一度でいいから触れてみたかった。
中学生の少女・アイちゃんに魅せられた、女の子たちの連作短編。
私は、今日の夜空を覚えていたい。
人と関わるのが怖いミカは、朝に怯えていた。
幼馴染のナミといる時だけ、ありのままの自分でいられる。
本当の私を照らしてくれるものは、ひとつもないんだ。
賑やかな看板、手元のスマートフォン、空に浮かぶ月。
私を照らすものはたくさんあるのに、導いてはくれない。
『きみのことなんて』
「なぁ、俺のこと苦手やろ?」
目の前の彼はそう言って笑った。
雨の日の図書室で、必ず会ってしまうシロヤマくん。
私は彼のことが苦手だ。
それなのに、彼はいつも目の前の席に座ってくる。
あんたは、白に似てると思うんだ。
何色にも染まれる色。
友達に言われた言葉が心を支配し、すっかり小説を書けなくなってしまった洋平。
そんな洋平に、早朝にも関わらずミキからメッセージが届く。
人の感情が、まるで雨のように降ってくる。
私の目には、人の感情が文字になって見える。
人の周りに、まるで雨のように言葉が降ってくるのだ。
教室は、いつもたくさんの感情で溢れている。
桃花さんの周りにはいつも「さみしい」が降っていた。
不思議だった。
桃花さんはいつも友達に囲まれている。
さみしいなんて感情から、一番遠い存在だと思っていた。
『香りの記憶』
香りというものは、厄介だと思う。
一度記憶に刻まれてしまったら、なかなか消し去ることができない。
手のひらで顔を隠すケイ先生が、たまらなく可愛かった。
隙間から見えた赤い頬を、今でも覚えている。
コーヒーを飲みながら思い出す、ケイ先生のこと、あの頃の私のこと。
あの瞬間、シュウちゃんは知らない大人の人みたいだった。
「まるで、からっぽみたい」
そう思っていた、十四歳だったあの頃。
歳を重ねてから気付いた、あの時のシュウちゃんのこと。
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