「私、混ざり仔なの。父が鬼で、母が人間」
「ああ、それで」
体を拭いたときに見た、アザと火傷。おそらく、迫害の痕。それに加えて、人の社会に混ざるために角を折って、髪や帽子で隠していたのだろう。
「母が亡くなって……親子で、住み込みで家事手伝いをしてたんですけど、もうそこにはいられなくて」
「ここに着いてよかった。どこを目指してたの? 体調が良くなったら送っていくよ」
「どこでも、よかったの。痛いことされない場所なら」
「じゃあ、行きたいところができるまでここにいる?」
「……いいの?」
「きみが、他のひとに迷惑をかけないならね」
「私、存在自体が迷惑だ……」
「そうじゃないんだ! ごめんね、そんなつもりで言ったんじゃない」
ユールツキンは透明な瞳で少女の顔を覗き込んだ。
「きみは図書館の中で走らない?」
「うん」
「本を破いたりは?」
「しない」
「他のひとに乱暴しない?」
「もちろん」
「じゃあ大丈夫」
ユールツキンは笑って腕を広げた。
「図書館とぼくは、きみを歓迎するよ」