こちらのアイテムは2020/11/22(日)開催・第三十一回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第三十一回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

写真が見せるひと時の記憶

  • シ-04 (小説|短編・掌編・ショートショート)→配置図(eventmesh)
  • しゃしんがみせるひとときのきおく
  • 狂った歯車堂
  • 書籍|A5
  • 70ページ
  • 400円
  • 2020/11/22(日)発行
  • 写真をテーマにした作品を集めた短編集です

    試し読み

    君に死んでほしいから、君との思い出を殺すことにした レミィ
     僕は『写真』を一枚一枚丁寧に破ると、それを全部雪の中に捨ててしまった。写真は一体なにを写していたのか判別できなくなり、それと同時に僕の数日間の出来事もすべてバラバラになって消えていってしまう。
     どんな写真でも破ればただの紙切れだ。その事実が、なんだか今はどうしようもなく僕に降り積もる。冬は寒い。当たり前だ。けれど、そんな当たり前のことにさえ今の今まで気づかなかったような気がする。僕はずっと、冬は寒いという事実を忘れてしまっていた。白く昇っていく息はただ単にそう決められているだけで、それが寒さの象徴だとは考えられなかったんだ。身体の震えは楽しさだと思っていた。そう思っていたけど、今はただ、それは寒さによる身体の反射的な作用になった。

    かの夢は今へと 蒼狗
     最後の片づけにとカウンターの下へと屈んだときであった。カウンターの下にあるのは小さな箱のみ、そう思っていた。
     訪れた客からは見えず、カウンターの椅子に座るとようやく見える位置に、一枚の古ぼけた写真が虫ピンで留められていた。長らくそこに貼られていたのだろうか、写真をはずすと壁の日焼けの痕がくっきりと浮き彫りになった。色も褪せ、年季の入ったその写真がなんなのか一目ではわからなかった。だが、映っている人物が誰なのか理解したことで、ようやく合点がいった。

    さよならをいいたくて 西木眼鏡
     朝起きてまず初めに私は同居人ともいえるライフアシスタントAIに挨拶をした。 「おはよう、ナターシャ」 「おはようございます、カエデ様。ただいまの時刻は午前七時二八分、昨夜の睡眠時間は六時間一二分でした。平均的な睡眠です」  流暢なニホン語で話すライフアシスタントAI。これが一昔前までは単語をただ組み合わせたような聞き取りにくい発音であったというから驚きだ。
    ポストカード かいこん
     差出人不明のポストカード。毎月十七日に届く不思議なカード。毎度変わる何処だかわからない場所の写真と、シールに印字された宛先。自筆のコメントすらないそのポストカードも、もう何枚目になるのだろうか。初めは不審に思ったが、それ以外に身辺に変わったこともなく、一年を過ぎる頃には毎月の楽しみの一つになっていた。  ポストカードが届くようになって二年程経った頃、ポストカードをちょうど良いサイズのポケットファイルに入れてみた。それまで無気味な束であったそれは突然愛おしいアルバムのようになって、それ以来気分が落ち込んだときには時折過去のものをめくるようになった。

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