「ああ、なんてこと。あなたもあの化け物にさらわれてきたのですね? どうしよう、ここにいたらあなたまで食べられてしまいます。どうにかして逃げないと……」
シグハルドは慄いて涙を流す姫君の手を握り、優しく声をかけます。
「いいえ、姫。私はあなたを助けに来たのです。どうかご安心を。あの化け物がこの部屋に来たら、私がこの剣で斬り殺してやります」
そして化け物が舌なめずりしながら扉を開けたとき、シグハルドは姫君を守るように立ち上がり、化け物を正面から見据えました。
「観念しろ! お前はこのシグハルドが成敗してくれる!」
シグハルドは女物の衣装を脱ぎ捨てると、剣を握って化け物に飛びかかっていきました。
激戦の末ついに化け物は倒れ、姫君は侍女の装いの下から現れた美しい青年に目を見張ります。
「あなたはいったい……?」
「私は西の国の王子です。あなたの兄君に頼まれてやって来たのです。そして今や、あなたを脅かすものはどこにもいません。どうか私の妃になっていただけませんか、美しい方」
———『西方英雄列伝第1巻』より抜粋
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