こちらのアイテムは2019/5/6(月)開催・第二十八回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第二十八回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

掌編小説と詩 ラベンダー

  • ツ-45 (小説|短編・掌編・ショートショート)→配置図(eventmesh)
  • らべんだー
  • 蓮井 遼
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 130ページ
  • 400円

  • 2017年に作成した三作目の掌編小説集と詩集です。

    船に身を預けながらもの思う旅行者 「フェリー」

    鳴き声に導かれ樹に衝突し、首輪が外れたことで役目に戸惑う馬 「霧のなかの馬」

    命の電話相談室に交通事故で親友を失った女の子の命の考察「届けられた手紙」など

    「死と生」をさらに哲学的に深化させた、著者がより文学とはなにか、生きる現象とはなにかを

    追求した 掌編小説集と詩集 「ラベンダー」


    掌編「フェリー」 序文試し読み。続きや他の話も気になる方はURLからお読みできますので、どうぞ。


    船内ではアナウンスも流れずに、船は港をあとにした。私は、旅程の流れに沿って次の目的地に行くためにこの船を利用した。船に乗るのは初めてではないが、大型な船に乗るのは初めてであって、船酔いしないかとの心配もあったが、怒号のように聞こえる音が私の客席スペースでは、ほぼ聞こえなく、酔おうと思っても揺れがないため心配する必要はなかった。しばらくはデッキに出て、流れていく島の風景や遠ざかる街の様子を眺めていた。そこに倉庫があったのかとか、港の輪郭はこういう形だったのかと、飽きるまで、いや飽きてからもしばらくはぼうっとしていた。天気が晴れていたこともあるのだろう、これが大雨だったら降り続ける雨の音で、心中の気分は変わっていたと思える。長閑に感じるということが、自分に行動しないように制限し、その静止が何かに身を任せたり、佇ませたりするきっかけになった。
     デッキから戻ると一番上の三階の客席で足を伸ばせるところがあったので、仰向けで寝ていた。船が岸から離れて遠くなると、私はこの成す術ない状況で、船になにか異常が起きたら海に沈むことだってあり得るのではないかと思った。この長閑な環境で、船という場では、一つの生死が握られている気がした。私も他の乗客や船員、貨物と合わせた一つの共同体のなかの一部だと思った。私が何を思おうとも船は速度を変えないように思えて進んでいるように見えた。電車や新幹線、飛行機であれば眠ったり、本を読んだり、音楽を聴いて過ごすと思ったけど、この大型船というのはなんとも奇怪な行動を乗客にさせると思った。感覚としては、飛行機の窓から見える空の見え方に近いとは思う。行けども行けども見えてくるのは空か海なのである。退屈には変わりないのだが、飛行機の場合はフライトの時間が長時間にかかっているのは見越しているし、定期的に何か食事など配られたりして、座席から備え付けの映像や音楽が聞こえるし、座席なので常に他の乗客が隣り合わせで座っているので、なにかと忙しさを感じる。これが船で仰向けに寝ていると、近くに人が寝てはいるのだが、この自由さ加減というのが飛行機とは比べ物ににならない退屈さを際立たせるのではないかと思った。第一、船員が巡回しないため到着まで横になって寝ていることはできるのだが、仰向けで寝ているのに、船は海を突き進んでいく。この間、私はどうすべきなのかがすっかりわからなくなった。広大な海と空に浮かんで、流れる雲のように私も運ばれているだけに過ぎなかったのだ


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