かし、台風のときには利根川を牛が流れてきた、とは前橋の有名な伝説である。関東の中ではずばぬけて災害が少ないことで有名だったが、市内のあちこちに川が流れていたので、水害だけは別だった。
だがそれも、利根川の堤防がまだなかったころの話である。いまでは、中心部を流れる広瀬川や馬場川はもちろん、暗渠として市庁の周りをめぐる小さな水路にも水があふれることはまずなかった。
また、水とともに前橋に流れ込んでくるものといえば風である。冬の名物ともいえる赤城おろしは、寒ざらしでおこされた畑を地響きをたてて走ってゆく。
そしてもうひとつ、前橋と言えば教会だった。川と同じぐらいには市内のいたるところに古い教会が建っていて、高々と十字架を青空に光らせている。
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