” ある者は、そこは死者のさまよう暗黒の世界だと言い、またある者は、行き場を失った魂の墓場だと言う。あるいは、生前に悪行を重ねた者が堕ちる地獄だと言う者もいる。
そこ冥界には、悪魔がいた。神に逆らい、神を怯えさせ、神を殺めた恐ろしい悪魔が。しかしそれは、とても美しい悪魔だった。その情熱的な目は正義を見据え、その官能的な唇は、愛の吐息を振りまいた。
目の前に横たわる死者に向かって、悪魔は、来る日も来る日も語り続けた。悪魔の語る愛の言葉が死者の魂を癒し、至高の安らぎをもたらした。
夜が訪れると、悪魔は涙を流した。来る日も来る日も、涙を流した。悪魔の流す涙が死者の体に伝い、その枯れた体を優しく潤した。
そして、百五十日目――。
ついに悪魔の涙がやんだ。 ”
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二千五百年の悠久の時を超えてこの地を再び支配しようと企む神々。その神々に立ち向かうのは、かつて彼らに逆らい追放された二人の悪魔。そして共に戦う戦士として彼らが選んだのは、気弱な一人の青年……
古代神話の謎を解きながら、物語は、その神話さえをも凌駕する、目眩く妖幻な世界へと変容していく――
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