ロデオのような荒くれ話から、英国馬術なみに背筋がピンとする話まで。いきなり始まり、いきなり終わる。444文字が絶妙にきつい縛りで個性しか出てない所が癖になる、やめられない止まらない「そこあまで444書」です。2021年尼崎文学だらけ(あまぶん)から派生した「444書〜お題に沿って大体444文字で文章を書く企画〜」の書籍版です。
web企画上の444文字テーマ(『スープ』『文房具』『雨』『路地』『夢』『海』『僕の・私の本屋さん』)に加え、書き下ろし「耐久! 続行乱舞! 444文字/1400文字/2400文字」と併せた一冊です。1篇は基本的に見開き2頁で(大体)444文字。辛口、甘口、ギャグからシュール、泣かせるものまで、何処から読んでも面白い200頁文庫本。
収録作品:岸本める・北中ねむ・サカトゲヨリオ・空豆・ひぐま・王木亡一朗・尾内以太・七歩・ひざのうらはやお・泉由良・にゃんしー(敬称略)。
【冒頭試し読み】
いい意味でイカれてる、虚実ないまぜ煙に巻く!(岸本める)
『消しゴムは見た』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15556587
消しゴムは静かに観察していた。
我々消しゴムは砂消しゴム、練り消しゴム、オブジェとして食べ物の形を模してみたり、判子になってみたりあらゆる物へ変化した。
「お前の目的は消す事なの?消さない事なの?」
『ワシは路地じゃ』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717930
もう少し詳しく言うと路地の概念じゃ。
似たモノとして山の概念(大文字)と川の概念(鴨川)がいる。あいつらは町が賑やかになるのが気に食わないらしく、町の中心地から少しずつ離れていった。ワシは人がガヤガヤと狭い路地にひしめき合い、山や鉾を見る祇園祭の時期が嫌いではないので町の中心地に居続けている。
『煮凝り、おかわり』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16718012
酷い職場にいた時、前世の自分は相当悪い事をしたとしか思えなかった。こんな奴隷のように働かないといけない事ある?しばらくして、いやもしかして前世ではなく学生時代の悪行が巡り巡っている状態では?と思い始めた。
学生時代はキラキラだったというフレーズ。これがどうしてもピンと来なかった。
惑わされるな、100%ホラ話だ!(ひぐま)
『死んだ人は皆そこの路地入っていかはる』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717937
若いもんは知らんやろけど、ここらの年寄りは皆知ってる話や。
時々死んだ人が集まってな、皆で揃いの浴衣着て並んでそこの路地入っていかはんねん。
奥に何があるか? 知らんわ。見に行って帰って来た人なんてあらへんし。
『涙の海』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717952
女の子は毎晩お布団の中で泣いていた。
学校でも家でも、嫌なことばかり。
泣いても泣いても、涙はどんどん出てきた。
あんまりたくさん泣いたので、ある日とうとうお布団の中が海になってしまった。
『うみおとこ』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717957
「夜に海へ行くな。海男が出るぞ」
子供たちはそう言われている。
でも、女たちは月夜の晩に揃って海へ出かけて行く。
何をしに行くのと尋ねても知らん顔だ。
町の男たちも気まずそうにそっぽを向いて黙っちまう。
天才絵師、全てがヤギになる!(サカトゲヨリオ)
『路地 入門 おすすめ』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717945
あなたへのおすすめ欄
ロージー・クワスィ博士著『利己的な路地』
路地と路地に区切られたセルは共生関係にある。
土地という資源を共有するライバルでもある。
『カリスマ』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15556577
はじめましてとお互いに挨拶した。
しろやぎさんは文房具の食レポブログ「禁断の果実」の管理人。ただの文房具マニアだったある日、ブログを読んで大ファンになった。世界が変わった。感謝を伝えるとしろやぎさんは「ツレが悪食でしてね。私はノートからはじめたんですけど。ふふふ、ノートはちょっと詳しいですよ」とはにかんだ。
天狗随一の本格派、最強のジョーカー!(北中ねむ)
『わたしのまちの本屋さん』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16717965
この町唯一の書店の主たる親父が死んだのは、俺が二十歳の秋。車で少し走れば、国道沿いに大型書店があるのに、親父の店は人々から愛されていた。当然、葬式は盛大で、町長までが「お父上の本はこの町の全てでした」と言って来たのには仰天した。俺自身は本なぞ糞食らえの精神で、店には全く足踏みしなかったためだ。
おかわり必至、満たされるほどカラになる!(空豆)
『完璧なレシピ』https://estar.jp/novels/25836861
顔を洗い、歯磨きを済ませてキッチンへ行く。
冷たい鍋にオリーブオイルと角切りにした野菜を入れ、弱火にかける。軽く塩をしてザッとヘラで混ぜて蓋をした。暫し待つと野菜から水分が出てくる。
【そこの路地入ったとこ文庫とは(そこ文)】
創作の「そ」の字から始める「そこの路地入ったとこにあるよ」を合言葉に一次創作の本を読める場所として2021年3月から活動を開始。尼崎文学だらけさんと出会ったきっかけとなりました。