今までに書いた中から、特に『わたしの好き』が詰まっているお話たちを短編集としてお届けします!
恋する女の子のふわふわ揺れ動くこころを描いた青春ものを中心に、『淡くてあたたかくて、たまにせつない』パステルカラーな雰囲気のお話を全9篇収録。パステルカラーな雰囲気のまま、ミステリやホラーなどもあったりします。
こちらから各収録作の試し読みができます!
https://x.com/tabun_menrui/status/1832402266982379841
【収録作】
①『こーひーぶれいく』(青春恋愛)
――わたしが恋をしたのは、実験器具でコーヒーを淹れるような先生でした。
中学校はあと一年あるから、大好きな先生ともあと一年過ごせると思ってた。春から別の学校に移る理科の先生と彼を慕う女子生徒の、修了式の日の話。まっとうに恋が破れる話。
②『おかしなガール』(青春恋愛)
――Q.本を読まない彼女が、本屋に通う理由は?
1.店主のおにーさん
2.大好きなお菓子(近くではここにしか置いてない)
3.その他
A.読むと分かります。
③『あの子の日記帳』(ホラー)
――たすけて、『先生』。
その教師には、今も心に引っかかる記憶がある。教育実習の際に読んだ、ある児童の奇妙な日記のこと。応えてやれなかった小さな叫びのこと。
得体の知れない、『黒い腕』のこと。
④『せんぱいはただの人。』(青春恋愛・ちょっとファンタジー)
――その人をわたしは、『せんぱい』とだけ呼ぶことにしている。
まじめでがんばりやで、やさしくて、なのに誰も寄せつけようとしない。わたしの放課後は、そんなせんぱいを追いかけて観察する時間。一生に一度だけ時間を止められるせんぱいは、いつどんなときに、誰のために力を使うんだろう。わたしはその瞬間が見たいんです。
……最近は、そのためだけじゃないんですけど。
他人が持ってるとくべつな力が分かる『わたし』と、『せんぱい』が、路地を歩きながらおしゃべりするだけの話。
④『さよならの儀式』(青春)
※『青春アンソロジー5「青の祝福」』(主催:千羽稲穂 様)寄稿作
――さよならの儀式はまだ終わっていない。
転勤族の父さんについていき、何度も出会いと別れを繰り返す中で、誰かと深い関係を結ぼうなんて気持ちはいつの間にか消えてしまっていた。
そんな僕を変えてくれた人がいる。音楽の授業、歌のテストで一緒に歌ったことがきっかけで友達になった羽田千里(はねだちさと)さん。だけど、高校を卒業すれば千里さんとも別れが訪れる。
卒業式の日。盛り上がる周りを横目に帰ろうとする僕を、千里さんが呼び止めて――
「誰かとお別れするときには、ちょっとした儀式をするようにしてるんだ。お互い気持ちよくお別れできるように」
「この曲、一緒に歌ってもらってもいい?」
⑥『まほろば駅3番線、純情列車。』(青春恋愛・ちょっとファンタジー)
――初デートははじまらない。私のせいで。
電車の乗り換えに失敗したせいで、大好きなあの人との初デートに遅れてしまう。人を運びきってがらんどうになったプラットホームの上。私は動けないでいた。
『3番線に、特別列車がまいります。黄色い線の内側で、気まぐれな救いをお待ちください』
そんなアナウンスと一緒に、時刻表にないはずの列車がやってくるまでは。
――うぶな恋心と、神様と、ちょっとした奇跡の話。
⑦『手のひら泥棒』(青春恋愛・ミステリ)
――なんできみが隣にいないの。
中学校の文化祭。二年三組の出し物は、白雪姫をもとにした劇。根津愛美(ねづまなみ)は、大好きな幼馴染の高木実(たかぎみのる)と、カーテンコールの挨拶で隣どうしになるはずだった。客席に向かってお辞儀するとき、自分だけが実と手をつなぐはずだった。小さいころは自然につなげていたその手を、久しぶりに。
けれど本番のカーテンコール、愛美の隣に実はいなくて。彼はなぜか、本来の立ち位置と違う場所で、他の演者たちと手をつないでいた――。
「どうしてそうなったか、わかんないんだ」
実自身もそう言う、謎でいっぱいの状況。
実の隣を。きっとあったかいその手を。誰がどうやって、なんのために奪ったの?
――愛美は、今日だけ探偵になる。
⑧『サラとゆきのよる』(童話)
――だいじょうぶだよ、サラ。ちゃんと見まもっているからね。
しんしんとふりつもるゆき。空にはまあるいお月さま。
かぜをひいたサラは、くるしくてねむれないよるをすごしていました。すると、サラがだきしめていた、クマのぬいぐるみがうごき出して……?
⑨『あいぞめ』(ヒューマンドラマ)
※境界アンソロジー『/(スラッシュ)』(主催・百百百百 様)寄稿作
――あなたの色に、染まりたいです。
渡井(わたらい)ゆずです。俳人・花山離水(はなやまりすい)先生のご指導のもとで俳句を始めて、三年目になります。応募した俳句の賞で、特別賞をいただけたのですけど……作品への講評には『才能は確かだが、師匠の影響を強く受けすぎてはいまいか。リスペクトと模倣の違いを今一度理解してほしい』とあって。胸が苦しくなりました。
けれど――。
賞に応募したわたしの連作にはじめて目を通された離水先生が、あるところで急に顔を青ざめさせたこと。
「ゆず君、ひとつ答えてほしい。この句は、『あれ』を見て詠んだのか?」
書斎のほうを指さしながら、かすれた声でそう尋ねてこられたこと。その日の稽古が途中で終わることになり、先生が屋敷の奥へ去っていかれたときの後ろ姿が、とっても小さく見えたこと。それのほうがずうっと、わたしの心をちくちくさせるのでした。
去り際に「しばらく旅に出る」と言い残された先生。わたしの連作のどれが、何が、あそこまで動揺させてしまったんだろう。先生は何を抱えておられるんだろう。先生のおっしゃっていた『あれ』とはなんだろう。わたしにできることは? かけられる言葉があるとしたら、それは?
ぜんぶの答えを探したくて、わたしは先生の書斎に足を踏み入れるのでした。「ゆず君ならいつでも入っていいからな」と言われているけど、恐れ多くて一度も入ったことのない、あの場所に。
表紙イラスト:しめじ 様
@4mej1題字:湖上比恋乃 様
@hikonorgel装幀:有限会社EYEDEAR 百百百百 様
@eyedear_info