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片翼天使の序奏曲

  • F-34 (小説|青春・学園)
  • かたよくてんしのおーばーちゅあ
  • さくら怜音
  • 書籍|B6
  • 286ページ
  • 1,000円
  • https://wingsweb.official.jp/…
  • 2022/9/25(日)発行
  • 【青春】【バンド】【中学生】【ブロマンス】

    腹黒ヤンデレ御曹司×強気わんこなピアニスト

    《あらすじ》

    楽器マニアで「演奏してみた」曲を作るのが好きな少年、相羽勝行。
    転入早々、金髪にピアス姿の派手なピアノ少年・光に出くわす。仲良くなりたいのだが、光に「友だちなんていらねえ、欲しいのは金だ」と言われて勝行は……。
    「じゃあ買うよ、いくら?」

    【音楽×青春×お金=友情爆誕!?】

    ド貧乏の訳ありヤンキー少年と、転校生のお金持ち優等生。
    真逆の二人が共通の趣味・音楽を通じて運命の出会いを果たす。WINGSはじまりの物語。


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    B6・286P フルカラーカバー

    青春学園ものブロマンス(友情/巨大感情)です。一巻読切・完結。
    長編シリーズのスピンオフ(前日譚)として、単品で読めます。

    ※WEB再録(4節まで)+書き下ろしSS+挿し絵8枚

    第5回ライト文芸大賞奨励賞受賞作品

    本文サンプル https://www.alphapolis.co.jp/novel/243157950/826131077

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    第4章「ひと夏の陽炎とファンタジア」より抜粋***


    挑発が過ぎて本気で怒らせたかもと一時ヒヤヒヤしたが、光は楽器だらけの部屋と、アレンジした楽曲を気に入ってくれたようだ。さっきまで青白かった顔も色を取り戻してきている。

    「お前って、魔法使い、とか……?」

    ヘッドホンを両手で押さえたまま、真剣な表情でそんなことを聞いてきたので、思わず飲みかけの水を噴きそうになった。

    「や、だって。あの画面勝手に動いたし……誰もいねえのに他の楽器も鳴ってるし! お、お……俺のピアノが……ピアノじゃなくて……なんか……歌に……」

    「これね、パソコンのソフトで打ち込んだり、楽器を演奏したやつ録音して作ったんだ。再生ボタンを押したら、ほら。さっきの伴奏聴けるだろ」

    「うおっ!? な、なんだこれ。すっげえ……てっきり心電図か何かかと」

    「そこで心電図とかいう難しい言葉が出てくる光もすごくないか?」

    本当にピアノ以外、何も知らなかったらしい。だが別の楽器の音を聴き分ける耳はしっかり持っているようだ。音と楽器名の一致ができないようで、楽器紹介を兼ねて手持ちのものを演奏したり、素材を再生して聴かせているうち、もう完全に光の目は憧れの何かを見るものに変わっていた。

    「これが全部このハコみたいな機械に入ってるってことか」

    「そうそう。で、このアンプを通してヘッドホン越しに聴こえてくる」

    今どきパソコンも知らないなんて珍しい。配線や仕組みを説明している間、一度も視線を逸らさない。その表情は真剣そのものだ。授業中、寝てばかりの彼からは想像できなかった。

    「光も弾いてよ、一緒にセッションしよう」

    パソコンにつないだ電子キーボードを差し出すと、嫌がることもなく光はいとも簡単にそれを使いこなした。

    何も教えなくても、ダイヤルで何かを調整して音やリズムを変え、どんどん自分なりの音を作り出していく。修学旅行先の楽器屋で見たような、浮かれた笑顔が目に入る。

    「なあ……あ、あのさ。お前の知ってる曲を弾いたら、もっかい歌える……?」

    そんなことまで訊いてきた。どうやら本気で気に入ってもらったようだ。

    「光は何なら弾けるの?」

    「なんでも」

    「え……どういうこと」

    「俺、いっぺん聴いたら覚えられるから。知らない曲だったら、一回聴かせてくれたら弾ける。そんかわり、うろ覚えだけど」

    「マジか、耳コピか……絶対音感がないとできないんだけど、チートすぎないか。光、ずるい」

    「ずるい?」

    「ああ、お前やっぱり天才だよ」

    正直自分にはないその才能が、とにかく羨ましすぎる。大袈裟でもなんでもなく、本気でそう思ったのだが、褒められ慣れてないのか、光は「嘘つけ」と照れてそっぽを向いてしまった。

    とりあえず自分の得意なジャンルあたりで、好みのバンド曲をサビまで弾いてみる。ヘッドホン越しに聴いた光は、「あー、それ聴いたことあるからわかる」と指を振り上げ、ぶわっとグリッサンドでスタート合図した。

    「歌って!」


    ――♪


    前奏から間違いなく、指定通りの楽曲演奏が流れ出す。メロラインではなく、あえて伴奏に転じて、ギターの担当を外して弾いてくれている。打ち合わせなしにここまでできれば、もう完全に本物だ。

    (お世辞なんかじゃない。本当にコイツの才能、すごい)

    勝行はギターを弾きながら、覚えているJロックナンバーを調子よく歌いあげた。こんなに沢山歌うのも久しぶりだと言っても過言ではない。

    けれど歌うたび、光が嬉しそうにこちらを見て、どんどんキーボードを弾き鳴らしては誘導のように誘ってくる。

    もっと、もっと歌えと。

    ヘッドセットのマイクを通した勝行の歌声とギターのメロディが、光をどんどん笑顔にさせていく。水を得た魚のように、それはもう生き生きと。

    そして勝行も汗を流しながら、笑ってギターを振り回した。


    ――そう。

    俺がやりたいと思った願いは、本当の夢は、政治家や総理大臣なんかじゃない。

    こうやって誰かと一緒に、音楽を作り出して歌うことなんだ。


    キャンパス一面に夢を描くなら、沢山の楽器に囲まれ、バンドのセンターに立って歌う自分の姿。

    全身使って叫び続けるかのように、勝行は何度もなんども、声を張り上げた。誰に聞かせるわけでもなく、ただ自分のために。

    二人は外が暗闇に溶けるまで、夢中で演奏し続けた。


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