【青春】【バンド】【中学生】【ブロマンス】
《あらすじ》
楽器マニアで「演奏してみた」曲を作るのが好きな少年、相羽勝行。
転入早々、金髪にピアス姿のヤンキー少年・光に出くわす。彼は素晴らしいピアノ演奏をしていたのだ。
ただし、授業中に。
彼と仲良くなりたい! 友だちになろうと近づくものの
「友だちなんていらねえ、欲しいのは金だ」と言われて勝行は……。
「じゃあ買うよ、いくら?」
【音楽×青春×お金=友情爆誕!?】
ド貧乏の訳ありヤンキー少年と、転校生のお金持ち優等生。
真逆の二人が共通の趣味・音楽を通じて運命の出会いを果たす。WINGSはじまりの物語。
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B6・286P フルカラーカバー
青春学園ものブロマンスです。一巻読切・完結。
長編シリーズのスピンオフ(前日譚)ですが、単品で読めます。
※WEB再録(4節まで)+書き下ろしSS+挿し絵8枚 第3版
第5回ライト文芸大賞奨励賞受賞作品
本文サンプル https://www.alphapolis.co.jp/novel/243157950/826131077
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第4章「ひと夏の陽炎とファンタジア」より抜粋***
挑発が過ぎて本気で怒らせたかもと一時ヒヤヒヤしたが、光は楽器だらけの部屋と、アレンジした楽曲を気に入ってくれたようだ。さっきまで青白かった顔も色を取り戻してきている。
「お前って、魔法使い、とか……?」
ヘッドホンを両手で押さえたまま、真剣な表情でそんなことを聞いてきたので、思わず飲みかけの水を噴きそうになった。
「や、だって。あの画面勝手に動いたし……誰もいねえのに他の楽器も鳴ってるし! お、お……俺のピアノが……ピアノじゃなくて……なんか……歌に……」
「これね、パソコンのソフトで打ち込んだり、楽器を演奏したやつ録音して作ったんだ。再生ボタンを押したら、ほら。さっきの伴奏聴けるだろ」
「うおっ!? な、なんだこれ。すっげえ……てっきり心電図か何かかと」
「そこで心電図とかいう難しい言葉が出てくる光もすごくないか?」
本当にピアノ以外、何も知らなかったらしい。だが別の楽器の音を聴き分ける耳はしっかり持っているようだ。音と楽器名の一致ができないようで、楽器紹介を兼ねて手持ちのものを演奏したり、素材を再生して聴かせているうち、もう完全に光の目は憧れの何かを見るものに変わっていた。
「これが全部このハコみたいな機械に入ってるってことか」
「そうそう。で、このアンプを通してヘッドホン越しに聴こえてくる」
今どきパソコンも知らないなんて珍しい。配線や仕組みを説明している間、一度も視線を逸らさない。その表情は真剣そのものだ。授業中、寝てばかりの彼からは想像できなかった。
「光も弾いてよ、一緒にセッションしよう」
パソコンにつないだ電子キーボードを差し出すと、嫌がることもなく光はいとも簡単にそれを使いこなした。
何も教えなくても、ダイヤルで何かを調整して音やリズムを変え、どんどん自分なりの音を作り出していく。修学旅行先の楽器屋で見たような、浮かれた笑顔が目に入る。
「なあ……あ、あのさ。お前の知ってる曲を弾いたら、もっかい歌える……?」
そんなことまで訊いてきた。どうやら本気で気に入ってもらったようだ。
「光は何なら弾けるの?」
「なんでも」
「え……どういうこと」
「俺、いっぺん聴いたら覚えられるから。知らない曲だったら、一回聴かせてくれたら弾ける。そんかわり、うろ覚えだけど」
「マジか、耳コピか……絶対音感がないとできないんだけど、チートすぎないか。光、ずるい」
「ずるい?」
「ああ、お前やっぱり天才だよ」
正直自分にはないその才能が、とにかく羨ましすぎる。大袈裟でもなんでもなく、本気でそう思ったのだが、褒められ慣れてないのか、光は「嘘つけ」と照れてそっぽを向いてしまった。
とりあえず自分の得意なジャンルあたりで、好みのバンド曲をサビまで弾いてみる。ヘッドホン越しに聴いた光は、「あー、それ聴いたことあるからわかる」と指を振り上げ、ぶわっとグリッサンドでスタート合図した。
「歌って!」
――♪
前奏から間違いなく、指定通りの楽曲演奏が流れ出す。メロラインではなく、あえて伴奏に転じて、ギターの担当を外して弾いてくれている。打ち合わせなしにここまでできれば、もう完全に本物だ。
(お世辞なんかじゃない。本当にコイツの才能、すごい)
勝行はギターを弾きながら、覚えているJロックナンバーを調子よく歌いあげた。こんなに沢山歌うのも久しぶりだと言っても過言ではない。
けれど歌うたび、光が嬉しそうにこちらを見て、どんどんキーボードを弾き鳴らしては誘導のように誘ってくる。
もっと、もっと歌えと。
ヘッドセットのマイクを通した勝行の歌声とギターのメロディが、光をどんどん笑顔にさせていく。水を得た魚のように、それはもう生き生きと。
そして勝行も汗を流しながら、笑ってギターを振り回した。
――そう。
俺がやりたいと思った願いは、本当の夢は、政治家や総理大臣なんかじゃない。
こうやって誰かと一緒に、音楽を作り出して歌うことなんだ。
キャンパス一面に夢を描くなら、沢山の楽器に囲まれ、バンドのセンターに立って歌う自分の姿。
全身使って叫び続けるかのように、勝行は何度もなんども、声を張り上げた。誰に聞かせるわけでもなく、ただ自分のために。
二人は外が暗闇に溶けるまで、夢中で演奏し続けた。
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