子供が寝しなに聞かされる物語「天の姫君と大海の王子」。
めでたしめでたしで終わるが、実際には……。
美しく残酷な世界で生き抜いた彼らの童話の行間をお届けします。
よくある物語(おとぎばなし)。貴方はその真実を知りたくはありませんか?
むかしむかし、あるところに。
ヴァイベル国とトゥルビヨン国、二つの大きな国がありました。王様たちは仲よく国を治めていましたが、ある時小さな競争をはじめました。王様たちの競争は喧嘩に、そして戦争になってしまいました。その戦争は何年も何年も続き、二つの国は恐ろしい魔法兵器を作り、世界を壊してしまったのです。ヴァイベル国は空を割り、恵みの雨を失いました。トゥルビヨン国は海に魔法の槍を落とし、激怒した海の民に恐ろしい呪いを掛けられてしまったのです。王様たちは自分たちがしてしまったことにやっと気づき、泣いてお詫びをしました。しかし、泣いても世界は元には戻りません。王様たちは自分達の大切な家族を空と海に向かわせました。
ヴァイベル国の姫は天へ。トゥルビヨン国の王子は大海の底へ。
魔法の得意なふたりは、壊れた世界を懸命に繕いました。おかげで世界は少しずつ元の美しい姿へと戻っていったのです。大切な家族を失ってしまった王様たちはその後、懸命に国を治めました。争いからは何も生まれません。
ふたりは天の姫君と大海の王子と呼ばれ、いまも空と海の離宮に暮らし、私たちを見守ってくれているのです。
「天の姫君と大海の王子 より」