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ぐったりにゃんにゃ<上>

  • F-11 (小説|BL)
  • ぐったりにゃんにゃじょう
  • ぽしい
  • その他
  • 22ページ
  • 0円
  • 2018/3/4(日)発行
  • ナルミ。ナルミはどうして、俺にやさしくしてくれるの

    気づけばナルミの家にいた。
    冷たい雪のなかから救い出してくれて、あたたかい風呂と食事を提供してくれた男。
    羽月には帰る場所がない。わからないのだ。
    羽月には過去の記憶がない。彼に拾われた日、それより前の記憶が、すべてうしなわれている。
    自分はほんとうの家に帰りたい?
    それともここにいたい?
    ナルミはどうして、自分を囲いつづける?
    なにもわからないけれど、ここは居心地がいい。記憶をとりもどすことは、すこし怖い。

    さあ、どうしてだろうね。きみがかわいいからかな


    無料配布本となります。
    <下>は小説投稿サイトエブリスタ様にて公開中。
    https://estar.jp/_novel_view?w=25151250


    <本文サンプル>

     まるで飼われている。

     いっそのこと、首輪でもつけてくれれば開き直れるのに。そう思いながらも口にはできず、羽月は玄関先にぼんやりと立ち、きょうも出社していく家主を見送るのだった。

    「じゃあ、行ってくる。昼食は冷蔵庫のなか。電子レンジで二分半、あたためて食べてね。おやつも冷蔵庫のなかだよ。それから……」

    「わかってる、ナルミ。遅刻するよ」

    「……そうだね。じゃあさいごに」

     その長身を屈めて、鳴海は羽月の唇をついばむように、いちどだけキスした。

     鳴海はキスをするときだって完璧で、ぜったいに鼻と鼻がぶつからないようにくちづけてくる。さきほど歯を磨いたばかりだからだろうか、すっとミントの香りがした。

     それでもすこしずれた眼鏡を正しい位置にもどしながら、「そうだ」とつけくわえる。

    「外は危険がいっぱいだから、出てはいけないよ」

     さいごに、って言ったくせに。それでも羽月は頷きながら、ドアを開けて出ていく男に手を振った。きょうも皺ひとつないスーツで、ぴかぴかに磨かれた靴で、美しく櫛のとおったさらさらの髪で。

     ドアが閉まったあとで、ゆっくり鍵を閉める。かたや自分は、と玄関の壁に貼り付けられている鏡に全身を映すと、上下ともだるだるになったグレーのスエット、まだ春先だというのに裸足、ぼさぼさの茶髪。

     なにが楽しくて、あの男は自分など囲っているのだろう。

     しかし、彼に見放されてしまうと、どこにも行き場がなくなってしまうのもまた事実だ。

     羽月には帰る場所がない。わからないのだ。

     羽月には過去の記憶がない。鳴海に拾われた日、それより前の記憶が、すべてうしなわれている。

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