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百音

  • E-15 (小説|その他)
  • もね
  • 1992年生-1994年生の10人
  • 書籍|B6
  • 270ページ
  • 200円
  • 2016/2/28(日)発行
  • 「窓」をテーマに、窓の向こうに見える景色を思いながら、おのおの小説や詩、短歌、俳句、エッセイを書きました。色とりどりの世界の切れ端になりますように。


    (小説、エッセイより冒頭抜粋)

    ○「愛じゃないもの」
     ――あ、いま虹が光った。きれい。ってことばにつられて顔をあげても手遅れで、もう光は消えている。だからあなたとあの光を共有することはできない。まだ虹はある。ひさしぶりにみたな。最近はよく雨が降る。夕立。

    ○「宇宙人の目蓋」
     ――ぼくの背中には、肉が変に盛り上がった紫色の瘤がある。五歳の時に、背中にできたけがを放っていたら、そのまま残ってしまったのだ。

    ○「This is my nonfiction」
     ――なんだ、これ。
       そう思ったときにはいつも、それはたちまち消え失せている。もう一度、今の感動を取り戻そうといくら目を凝らしても、その幻覚は一日に一度しか見えない。

    ○「かたいつぼみ」
     ――「ユニコーンなんだよ。その男」
       わたしがそう言うと、ミヤコはアイスカフェラテにささったストローをくわえたままこちらを見た。まるで、わたしのほうが変なことを言ってるみたい。

    ○「オレンジの尾」(エッセイ)
     ――回転寿司に行ったときに、海の仕事をしていた祖父が席につくと必ず言うことがあった。
       「ゆでたエビください」
       祖父がそう言ったのを初めて聞いたのは、私が小学生の頃だった。

    ○「涙を流すとしても」
     ――この世界を支配しているものが、手元にある。それは札束でも核爆弾でもない。白い箱。大きさはすべて違う。飴玉がひとつ入るだけのものから、家一軒がすっぽり入ってしまいそうなものまで。ぼくが持っているのは、大人の手のひらほどの長さの直線十二本を集めた白い箱だ。

    ○「間接照明」
     ――ホールケーキはぼんやりと浮かび上がっているように見えた。薄暗いキッチンの中、僕はそのケーキを眺める。白いクリームと赤いイチゴの鮮やかな色彩が美しい。

    ○「ゆびさきもふれない」
     ――ん、とちいさく呻き声をあげて、彼はねむっている。ふわふわした髪のさきがくるんと丸まって、ひとふさ、頬にかかっている。あさの、と口にした声が、すこし、ふるえた。

    ○「遠藤試論」
     ――過去にまつわることを思い返すことならばできるのだが、過去そのものを思い返すことがどうにもできなくて、今、歯痒い思いをしている。









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