一 身の上
十一月になった。
今日は土曜日。アラームをセットせずにのんびり寝ていたら、インターホンが鳴った。箱買いしているエナジードリンクなら置き配指定にしていたのにな、と思いながら出てみると、クール便だった。
「お名前、お間違いないですか」
伝票には浅井(あさい)大樹(だいき)の文字。僕宛で間違いない。送り主の名前には覚えがなかった。
「はぁ……どうも」
ずっしりと重い発泡スチロールの箱を受け取り、ワンルームに運んで何重にもなったガムテープをはがし、フタを開けた。
「ひぃー!」
僕は尻もちをついてガタガタ震え上がった。
中に入っていたのは、弟の生首だった。
「ひゃ、あっ、あー!」
なんで。どうして。翔太(しょうた)、なぜそんなことになっているんだ。
よくできた模型か何か? いや、間違いなくこれは翔太の生首だ。記憶の中と違って、髪は金髪で、ざんばらになっているけれど。
「ん……? あ、兄ちゃんや!」
「うひゃー!」
生首の翔太が喋りだした。
「もー! 聞いてや聞いてや聞いてや! 酷い目に遭ったー!」
「ひっ、ひー! 南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
僕は祖母に教わった通りに手のひらをスリスリとこすり合わせたが、翔太は構わずに続けた。
「ボッコボコに殴られてな、その後椅子に縛り付けられて、チンコの先をチョッキン切られて」
「ぎゃー!」
「そっから少しずつ指とかを……」
「やめてやめてやめて! 聞きたくない!」
「まあその辺りはええか。なんでそんなんなったかっていうと、おれホストしとってんけど、女の子風俗に沈めてて、その中の一人がお偉いさんの娘さんやったらしくてな、とっ捕まってこのザマ」
事情はわかった。突っ込みどころ満載でどこから始めたらいいのかわからないが、最も大きな疑問はこれである。
「な、な、なんで首だけになっても喋っとんねん!」
「それがなぁ……自分でもようわからへんねん。途中から記憶ないし」
「成仏してくれ、翔太!」