前から綺麗な女の子だと思っていた。
ショートの黒髪に、くりっとした二重の目、細い顎。身長は百五十センチそこそこ。いつも黒っぽい服装で、スカートを履いているところは見たことが無い。ピアスがいくつもあいていて、ハイライトというタバコを吸っている。
それが彼女だった。
俺は大学二年生の冬、学内の喫煙所で、思い切って彼女に話しかけてみた。
「ねえ、ここでよく会うよね。学部は?」
彼女はタバコの煙を吐き終えた後、ぼそっと言った。
「文」
「そっか。文学部か。俺は商学部」
「ふーん」
まるで興味なさげな返答に、俺はしまったなぁと思っていたのだが、それからは意外と話に乗ってくれた。彼女は言った。
「そのタバコ、カッコいいよね」
「うん。これに似合うオッサンになりたくて吸ってる」
「きっとなれるよ。君さ、名前は?」
彼女の方から聞いてくれるとは。俺はにやけながら言った。
「荒牧(あらまき)純(じゅん)。ジュンは純粋の純」
「ふぅん、純粋そうには見えないけど」
「よく言われる」
「あたしは荻野(おぎの)楓(かえで)」
カエデ、という名前の響きは、クールな彼女によく似合うと思った。この機を逃してはなるまい、と俺は思い切って切り出した。
「連絡先、交換しない?」
「いいけど」