子供は親を選んで生まれてくるという話がある。
僕は父さんと母さんを自分で選んだのだろうか。
夫婦仲はいいし、好きな物は大体買ってくれるし、食べ物のワガママだって聞いてくれる。
選ぶ親としては文句のない二人かもしれない。
でも、僕に中学受験を押しつけてきたのはどうなんだろう。
小学四年生になった僕は、他のみんなが遊んでいる時間に、塾に行かなくてはならなくなった。
そういう窮屈な星の下に、神様の気まぐれで生まれてしまった、という方が僕としては納得できる。
「じゃあ、瞬(しゅん)。気をつけて行ってらっしゃい」
「……行ってきます」
母さんがにこやかに手を振った。塾に行く時はバスが出ているから、それに乗るのだ。
帰りは母さんが車で迎えにきてくれる予定だ。終わるのは夜の九時。休憩中に食べるお弁当も塾のリュックの中には入っていた。
バスの中は静かだった。ここにいる小学生たちがみんな、受験勉強を強いられた仲間だと思えば少しは気楽かもしれない。
けれど、受験勉強は合格枠の奪い合い。本当はライバルなのだ。周りより一点でも多く点数が取れるようにみんな必死。