「わぁ、おっきいー」
ぴんとシーツを張られてお行儀良く二台並べられたダブルベッドの上へといきおいよくこてんと転がり込んでみせる――寝室のドアを開けてすぐさまのおおよそ予想通りのそんな行動を、まんざらでもない心地でぼんやりと周は眺める。
「なにしてんの」
わざとらしいほどの素っ気なさを張り付けた口ぶりで尋ねれば、おおよそひるむことなどない様子で返される言葉はこうだ。
「なにってまぁ、巣作り?」
いやに広いベッドの隅に腰を下ろしたこちらをあまえたような上目遣いでじいっと見つめながら素肌と馴染ませるようにシーツの上で身をよじらせる姿はいたずらざかりのおおきな猫みたいで、もう何年も見慣れているはずなのにちっとも飽きることのない自分にいまさら呆れてしまう。
しゃり、と糊のきいたシーツが立てる些細な音が波間に吸い込まれていくさまは、耳にもくすぐったく心地よい。
「やっぱよかったねえ、ここにして」
うっとりと満足げに瞳を細めながら、忍は答える。「なんか家っぽいもんね、すごい落ち着く」
ほんものの『家』よりも遙かに豪邸であることは、ひとまずはおいておいて。
「ね、周?」
「ん、」
相づちとともに、かすかに潮の香りの残る髪をふわりと撫でてやることで応えてみせる。
テレビのニュース番組を見ている時に時折目にする「○○アナは夏休みです」の案内に感じるあの座りの悪さは何なのだろう。
オフシーズンにしか休みがとれずご愁傷様としか言いようがないような気持ち半分、繁忙期を避けられて却って良いのかもしれないとうらやむ気持ちが半分。
――『秋休み』と素直にそう呼べばいいのに、というのが子どもの頃からの変わらない感慨だ。
少しばかりの気がかりな大型案件をどうにか無事に乗り越えたご褒美とばかりに突如与えられた『秋休み』―それが、らしくもないバカンスを決行することを決めたきっかけだった。
忍まで時期を合わせてあっさりと休みが取れたあたりは、またとない幸運としか言いようがないと思うのだけれど。
「湘南の海とは違うよねやっぱ、あたりまえだけど」
「……だな」
こてんと傍らに身を寄せるように身体を倒し、いやに高い天井の上でくるくると回るシーリングファンをぼんやりと眺める。