違法者を取り締まるべく、異世界へ派遣された神技隊。だがその裏には別の思惑が潜んでいた。
突如現れた「第十八隊シークレット」瓜二つの五人。
まやかしの平穏が失われた時、全ての謎は消えた歴史へと収束する。
謎と陰謀愛憎渦巻く駆け引き、異能アクションファンタジー!
【戦闘/アクション/幼馴染み/強い女性/両片思い/じれじれ/駆け引き/群像劇】
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異常な『気』を察知することには、慣れていたはずだった。それなのに見逃したのは、心地よい春の陽気に負けていたせいだ。
微睡みから抜け出した青葉《あおば》は『異変』に気がついた途端、深く考えずに走り出した。反射にも近い。
慌てたせいで上着を忘れてきたが、寒いと感じるような気温でもなかった。大通りから脇道に入り、さらにその奥の路地裏まで足を踏み入れても、涼しいと思う程度だ。
まだ午睡中だった仲間たちを置いてきたのは正解だったと、青葉は独りごちる。起こすのが面倒だったからというのが理由だが、こんな狭い場所では人数がいても身動きが取れない。短い黒髪を手で適当に整えながら、彼は汚れたダンボールを飛び越える。
「まあ、それにしたって、何も言わずにってのはまずかったかもな」
自嘲気味な言葉が漏れるのは、彼が目指す先にも仲間がいるためだ。自転車やバイクが目につく狭い路地の向こうには、三つの『気』があった。そのうち一つは、仲間の一人である梅花《うめか》のものだ。
異常事態に気づいて一人で探りに行ったのだろうか? それならば起こしてくれてもよいのにと思うが、自分の行動を振り返ると強くも言えない。
「いや、あいつの場合は常習犯だし」
駆けながら、彼は頭を振った。障害物が次々と現れるため走りにくい。何度かペットボトルを盛大に蹴飛ばしてしまった。
しかし幸いなことに、迷惑そうに脇へと避けていた通行人は、奥へと進んでいけば見あたらなくなった。もちろん、異変を察知したからではないだろう。一般人は『気』を感じ取ることができないから、気づけるわけがないのだ。
人間ならば誰もが持っている『気』と呼ばれるもの。把握できない普通の人間にとっては存在しないも同然だが、青葉たち『技使い』にとっては違う。
何気なく辺りの様子を視界に入れるがごとく、さほど意識しなくてもその情報は手に入る。第六の感覚と言ってもいいかもしれない。不思議と個性もあるのだが、感情も反映されてしまう、ある意味厄介なものだ。
そして何より重要なのは、技使いのそれは普通の人間とは異なるということだ。わかりやすいのは強さだろう。技使いは大概強い気を有している。
だから技使いであれば、気の持ち主が技使いであるか否かはすぐにわかる。相手が実力者の場合は、隠していなければという条件付きだが。
今、青葉が目指しているのも、そういった強い気であった。
「何でもなきゃいいんだけどな」
取り越し苦労であればかまわない。だが、この無世界《むせかい》で技使いの気が三つも集まっているのは異常だ。