壁一面の棚に整然と並べられた、紅茶、紅茶、紅茶の数々。
おそらく五十種類は超えるであろう、様々な種類の紅茶の缶に囲まれた空間。
「うわぁ…、うわぁ…、うわぁ…!」
思わず興奮気味にその場を駆け回ると、おなじみのピュアティーから見たことのないブレンドティーまで、次々と色んな茶葉が目に飛び込んでくる。
これは、朝食向けに作られたダージリンのブレンド。
これは、万人受けしそうなアップルティー。
ラプサンスーチョンベースのちょっと変わったフレーバードティーも。
どれも飲んでみたくて、くらくらしてしまうものばかりだった。
ここから出たくなくて、ずっとここに居たくて、堂島リゼは思わずこう呟いていた。
「俺、ここに住みたい…!」
『サロン・ド・テ・プランタン』。
レトロモダンな建物が軒を連ねる、坂道の多い港町にその店はあった。
一見アンティークな外観の一軒家だが、中に入るとそこには紅茶の世界が広がっている。
一階は紅茶を展示販売するティーミュージアム。
二階に上がると店の紅茶とティーフードを楽しめるカフェスペースになっている。