「縁、大事にしてね。ありがとう。大好きだった。」
「うん、僕も楽しかった。幸せだった。又ね。」
あー、振られちゃった。縁を大事にってなんだよ。君がたやすくさっき切った物じゃないか。そんな縁を大事にしろって意味が分からない。なんなんだよ。重い足を必死に動かしながら僕は進んだ。
カランカラン
「いらっしゃいませ、どうぞお座りください。」
「はい。バッサリいっちゃってください。」
「じゃあ耳より上で大丈夫ですね。サイドも刈っちゃいますね。」
「お願いします。」
パサッ チョキ ジョリッ
たくさんの擬音が僕の頭に響く。落ちてゆく髪の毛はさっき僕が切られた縁のように無抵抗で、あっさりしていた。
「こんな感じでどうですか?」
「あ。すごいいい感じです。ありがとうございます。」
「はい。それではお会計になります。三千五百円となります。」
「はい。」財布を取り出し、軽くお札の偉人と会釈をし、お札を出した。
「五千円のお預かりで、おつりが千五百円となります。毎度ありがとうございました。」
僕はペコッと礼をした後帰った。外へ出ると、風がすごい気持ちよくて、頭皮にダイレクトに来る感じが癖になった。
「ただいま。」
「お帰り、けんちゃん。あとで大事な話があるから、予定空けといて。」
母の声が聞こえた。なんだよ、大事な話って。僕が振られたというのに。
「うん、分かった。」そう言いながら僕は洗面台に向かい、手を洗いに行った。鏡に映る僕の顔は凜々しく、さっぱりしていた。僕の気持ちはまだまだ、ドロドロだというのに。そして母のところへ向かった。
「お母さん、話ってなに?」
「最近、おばあちゃんの体調が悪いから、帰郷することにするの。だから引越ししなくちゃいけないの。転入手続きは出来てるから、けんちゃんは友達に挨拶しときなさい。」
「え、あの田舎のちっちゃい村?僕小さい頃行った覚えあるけど、不気味で好きじゃないんだけど。」
「知らないわよ。とにかく決まった事だから。ていうか髪切ったの?何やってんのよ!あんたそのまんまじゃ村に入れないわよ。このバカ。とにかくカツラでもして行きなさい。」
「いや何でだよ。髪ぐらい切っていいだろ。」
「髪っていうのはね、人との縁を表すのよ。だから切っちゃダメだったのよ。」
「いやそれどこ情報だよ。そんなありきたりな事にだまされんなよ。だからお母さんそんな髪長かったんだ。ずっと不潔だと思ってた。」
「私の村ではそういう風習なの。あんたせいぜい村に行って、洗礼を食らうべきだわ。」
「いや知らないよ。僕行きたくないし。」
「女手一つで育ててきたお母さんを裏切るっていうの。」
お母さんは泣き出してしまった。僕はこうなってしまったら、うんとしか言えなくなってしまう。
「うん。分かったよ。行くよ。」
「分かればいいのよ。」
その言葉を最後に会話が終わった。そして自分の部屋に戻り、友達にラインし、転校することを伝えた。