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メモリーボート

  • お-02 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • めもりーぼーと
  • 市川湊都
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 34ページ
  • 350円
  • 2026/5/4(月)発行
  • じょぼじょぼじょぼじょぼ 

    朝、この俺が一人でコーヒーを淹れていた。この家をゆっくり見渡す。本当にいなくなっているんだなと思った、愛しき、俺の家族が。思考がグルグル回る、責任転換のメリーゴーランド。なぜ逃げた。なぜ俺を裏切った。

    「アーーー、腹立つ。」とっさに出た言葉だ。名誉もあるし金もある。こんな俺の家族で幸せだろが、ボケ。そこら辺にあった無抵抗な空き缶を蹴った。

    「これからぁ、あいつらに、なんか金も払わなくちゃいけねぇんだろ。怠いって。」

    「もーーー、あいつらこの後の事、覚悟は出来てんだろうな。」

    もう本当にしょうがない。なにもかもぶん殴ってやりたい。頭をかいて、白い粉が舞うとき、景色が真っ白になってやっと冷静になった。

     風が吹いているわけでもないが、背中を押されるよう家を出た。そして、家の近くに公園があることを初めて知った。

    「案外、俺何にもしてなかったな。家事とか育児とか。」俺だって検察官で言葉に出来ないほど、忙しかったし・・・。点字ブロックに沿うよう、レールに従って進んだ。何も考えたくないから。

     変なところに着いた。ここはなんだ。

    (看板)メモリーボート     

     (メモリーボートより)


    今地球は一人です。

    人口は十億人以上ですが。
    誰も人と交われず単色な気がします。


    東京。
    それは静寂。
    でもまだ分かり合えるって信じてる人がいる。
    地球はまだ捨てたもんじゃない、と。
    そういうひとはみんな煙たがられている。
    私は、別にそういう人がいてもいいと思うけどな。

    明日、私は彼と漂流する。火星へ。

    彼はいつも楽な道を教えてくれる。
    だからいつも頼りにしてる。
    こんな私を正してくれる優しい人。
    火星はきっときれいであろう、

    地球より。

     (火星人より)



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