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自由苦手 日記

  • あ-15 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • じゆうにがて にっき
  • 真実のホタテ
  • 書籍|A5
  • 真実のホタテの2年間の日記をまとめた一冊です。

    「常識的」で、「普通」で、「期待に応える」わたし。
    それはわたしを守る術だったはずなのに、いつのまにか、わたしを閉じ込める檻のようになっていた。

    このZINEは、日記を通じて「了解可能なわたし」を解体し、理解されないままでも生きる未来を探る試みです。


    はじめに/「わたしとわたしのカテゴリーとその中での普通とそこから派生する期待と」

    引っ越して少し経った頃、近所の焼肉屋に行った。女将さんは明るい人で、初めて来たわたしたちにもよく話しかけた。しばらくすると常連さんが何人か来て、お店は賑わっていった。

    お腹も膨れてきた頃、女将さんが常連さんに「今日若い女の子来てるから、得意のアレ見せたってえな!」と大きな声で言った。

    えっと、わたしか、となる。 店内で「若い女の子」に最も該当するのは自分だった。静かに身構える。常連さんは「え〜」とか「も〜」とか言いながら立ち上がり、180度の開脚をした。

    「え、すご〜い!」。タイミングを見計らって、わたしの口から音が出る。「体柔らかいんですね」。少し驚いたように眉を上げ、顔の前で軽く拍手するような手の動きもしたと思う。

    急な展開にざわざわしつつも、「なんだこれ」という小さな違和感はあった。それなのに、期待された反応をしてしまった。


    昔から期待に背くことが苦手だ。空気を読むのは得意ではないため、素早く正確に相手の期待を察知することはなかったと思う。でも、露骨でパターン的なものはわかるようになったし、何が期待通りかわからなくても、何かを期待されていることはわかった。 

    型に沿ってやりとりに応じると、収まりが良い。ただ、それを続けると「収まり良いわたし」が相手の中で強まり、言動は窮屈になる。イメージから外れれば失望されると、謎に頑張ってしまう。 

    冒頭の焼肉屋事件には、自分らしさが詰まっている。「若い女の子」という箱にぽいっと入れられことも、最初から道筋が決まったやりとりも、嫌だった。わたしじゃなくて「若い女の子」の振る舞いが求められているから。しかし、それでも期待に応じる。きっと、期待に応じないわたしを、他者は受け入れないと思っている。


    2年間の日記を振り返ると、常識や周りの期待に苦戦するわたしがいた。期待の押し付けに気付き、はじめは怒った。でもそのうちに、これはある程度自分の言動を含めて成り立っているところもあるのか、となった。一方的な場合もあるが、どこにいてもわたしがちゃんとわたしでいれば良いのかもしれない。ただ、それが思ったよりずっと難しく、実現できていない。これがわたしの現状だ。わたしのそういう部分は、今後どうなっていくのだろうか。 

    ちなみに、焼肉屋事件の際、向かいにいたパートナーは「がはは」と笑って「意味わかんない」と言った。 常連さんはなんとも言えない顔で「意味わかんないって言われた…」と小さく言った。隣の常連さんも少し戸惑った顔だった。それだけだった。

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