小さなころから本が側にあり、いつも物語の世界に入り込んでいた。
大学では文芸サークルに入り、日本文学を専攻した。
バイトは書店と図書館だった。
初めに入った会社も書店だった。
だが、私はずっと言葉が怖かった。
自分の中にあるものを誰かに伝えるとき、私たちに与えられているのは主に言葉という手段だ。
でも、自分の中にあるものを言葉に当てはめると、曖昧で自由なままふわふわと飛び回っていたものが
言葉の輪郭に押し込められてぎゅっと固くなり、
そこに当てはまらなかったものは味気のない砂のようにさらさらとこぼれ落ちていって、
私はそれを見ていることしかできない。
それが嫌で、怖くて、言葉にする前の未分化な状態のまま、大切に抱きしめているのが好きだった。
それでも、言葉を使わずに生きていくことはできない。
また、言葉にすることの恐怖を乗り越えて、自分の中に言葉を生み出したい欲求や衝動を感じることもあった。
忘れられない昔のことを思うとき、
大きな衝撃で自分が揺さぶられたとき、
自分の中にずっとあったものが似合うドレスを見つけて身に纏うように、
時間をかけて自然な形で言葉へと変化していったとき。
自分の言葉が生まれ、溢れてくる。
そのような自分の言葉たちを最も安心して生み出せている瞬間があると気づいた。
それは手紙を書いているときだ。
ゆっくり時間をかけながら、ペンの先から自分の言葉を生み出して、
そっと紙の上へ乗せる。
そして、この言葉を受け取ってくれる人へ送る。
手紙を書くときのように自分の言葉を集めて本を作ろうと思った。
自分の言葉を生むことを決して急がず、誰かに届くことを祈りながら一冊の本にする。
そうやって散文集『私のために書く手紙』は生まれた。
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