ずっと言葉が怖かった。
自分の中にあるものを伝えるとき、誰かとコミュニケーションを取るとき、
自分の中で思考を巡らせるとき。
私たちには言葉という方法しか与えられていない。
でも、自分の中にあるものを言葉にあてはめると、
曖昧で自由なままふわふわと飛び回っていたものが
言葉という輪郭に押し込められてぎゅっと固くなり、
そこに当てはまらなかったものは味気のない砂のようにさらさらと
こぼれ落ちていって、私はそれを見ていることしかできない。
それが嫌で怖くて、言葉にする前の未分化な状態のまま、
大切に抱きしめているのが好きだった。
でもやはり言葉を使わずに生きていくことはできない。
それに、言葉にすることの恐怖を飛び越えて、
私の中からたくさんの言葉が溢れ出してくることがあった。
忘れられない昔のことを思うとき、大きく心を揺さぶられたとき、
自分にとって本当に大切なものや人に出会ったとき。
自分の言葉が溢れてくる。
その言葉を発することにはまた新しい恐怖があるのだけど、
なんだか安心して自分の言葉を生み出せている瞬間があると気づいた。
それは手紙を書いているときだ。
自分の言葉をゆっくり生み出して、読んでくれる人のことを考えながら
ペンの先からそっと紙の上に乗せる。
丁寧に包んで相手に送る。この言葉が届きますように。
これは、統一されたテーマもないけれど、
私の中でゆっくり育てた言葉を
誰かが読んでくれたらいいなと思いながら
手紙を書くように作った本です。