こちらのアイテムは2023/6/18(日)開催・文学フリマ岩手8にて入手できます。
くわしくは文学フリマ岩手8公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

ある夏の日に

  • ウ-06 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • あるなつのひに
  • ゆら
  • 書籍|B6
  • 100円
  • https://story.nola-novel.com/…
  • 2023/6/18(日)発行
  • 夏の煌めきや切なさを閉じ込めた短編集。日常の中に少しだけ非日常があるようなお話。
    ※「ひかりの記憶」は上記URLから全文読めますが、収録用に若干の内容修正がある予定です。

    以下、各話あらすじと試し読み。

    ■「タイトル未定」
    →期末考査を終えた高校生二人が、通学路にある謎の場所を訪れるお話。
    ・試し読み
     平日の、まだ日も高いうちに制服で外を歩いていると、なんだか後ろめたい気持ちになる。隣を歩く市(いち)香(か)さんにそんなことを話してみたら、「茉莉(まり)さんらしいですね」と微笑まれた。期末考査も無事終わり、部活動は明日からなのだから、この時間帯に帰ることになんの不都合もないというのに。

    「ねぇ、茉莉さん。あの場所に何があるか、茉莉さんは知っていますか?」

     市香さんはそう言って、横断歩道の向こう側を指さした。ここからだと、小さな森のようにも見える謎の場所。通学中に毎日目にするその場所の正体を、わたしは知ろうとしないまま三年が経とうとしていた。

    「さぁ……いつも気になってはいましたけれど、訪れたことはなくって」


    ■「ある夏の日に」
    →たった一つの出会いをきっかけに、毎日を頑張ろうとするお話。
    ・試し読み
     夏が始まったばかりのある日。僕は今まで過ごしてきた暗くてじめじめした生活から抜け出し、初めて外の世界に顔を出した。生まれて初めて見る、新しい世界の眩しさったら! 色のないこれまでの世界とは違い、周りにあるたくさんの色が内側から発光しているみたいに輝いていた。ありきたりな表現だけど、目に映るものすべてが鮮やかで、きれいで、眩しかった。
     いつまでもこの世界に見惚れていたかったけれど、僕は世界の美しさを見るためにあの場所を抜け出したんじゃない。それに、これからの僕に時間はそれほど残されていなかった。
     その限られた時間の中で、やらなければいけないことがある。この声を誰かに届けるのだ。
     それを実現するために、僕は今日も歌う。


    ■「黄昏時の廃校舎」
    →廃校舎で出会った男の子と、お互いに自分の気持ちを認め合う話。

    ・試し読み

    「掃除、僕にも手伝わせてよ! 蔵の中見てみたいって前から言ってたじゃないか!」 

    「そうは言ってもなぁ……勇磨には危ない物もあるかもしれんからなぁ……」

     両手を振り回して駄々をこねる僕に、じいちゃんは困ったように頭を掻いた。

     お盆休みの恒例行事になっている、じいちゃんの蔵の掃除。蔵には社会の教科書で見るような昔のものがいっぱい詰まっているって聞いたから、僕は見せてもらえるのを首を長くして待っていたんだ。

    「六年生のお兄さんになったらね」って約束だったから、今年こそは参加できると楽しみにしていたのに。いつもは途中で寝てしまうじいちゃん家までの移動中も、今回ばかりは目が冴えて眠れなかったというのに。じいちゃんも父さんも、みんな今になってダメだと言い出すなんてひどい。

    「じゃああんたはほら、これに行ってきなさい」

     母さんはそう言って、ちゃぶ台に乗っているチラシを手渡した。いかにも町内で作ったようなチラシには、「タイムスリップ⁉ 昔の学校を探検しよう!」と大きな文字で書かれている。飛び入り参加もオッケーらしい。なんだかうまいことヤッカイバライされているみたいで気に入らないけど、古い学校も面白そうだからよしとしよう。


    ■「ひかりの記憶」
    →自分の故郷で、花火の光に昔を思い出す話。

     とある夏の昼下がり。戦争が終わってから、俺は初めて故郷を訪れた。あんなことがあったのに、ここは何一つ変わっていないようだった。どこまでも青々と高い空。湿度の低い風に靡く水田の稲。昔は少し怖かった、境内の傍にある小さな森。入道雲のように茂った木の葉がざわざわと揺れる様子は何かの囁きのようで、子供の目には神々しいような、不気味なような、そんな風に映った。古いしきたりや言い伝えが生きている田舎だからこそ、一層。

     今日は、俺が戦地に赴いている間に亡くなった妻の墓参りに来た。終戦から時が経ち、ようやく気持ちに整理がつくようになったのだ。それでも、まだ受け入れられない現実や消えない記憶に苦しめられる日はあるけれど。


    ■「蜩」
    ※140小説のため、試し読みは割愛します。

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