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良縁結ぶは神ならず

  • D-11 (小説|エンタメ・大衆小説)→配置図(eventmesh)
  • りょうえんむすぶはかみならず
  • 鈴響雪冬
  • 書籍|A5
  • 86ページ
  • 400円
  • 2013/08/11(日)発行
  • 巫女さん × 縁結び

    その恋の行方は巫女さん次第!?

    京姫神社、そこには縁結びと恋を司る神様と告白や結婚をためらう人の背中を勝手に押してあげちゃう、そんなお節介な巫女さんがいた―――。

     

    ストーリー

     京姫神社―――それは、縁結びと恋愛成就、つまり恋の女神、色瀬京姫神を祀る神社。
     様々な縁を結ぶということで地元ではちょっと有名なその神社には今日も色々な人が色々な悩みを抱えてやってくる。
     ひょんなことから京姫神社に奉仕することになった巫女の楓は、彼らの悩みを聞いているうちに居ても立っても居られなくなり、告白に悩む片思いの子の背中を押してあげたり、マリッジブルーに悩む新郎の相談を受けたりと、右に左に大活躍するのであった。

     

    本文見本(書き出し)

    読みづらい場合は公式ページでも読めます

     作りかけの御守りに、袋詰めの途中で止まっている破魔矢、〈日本の四季と祭〉というタイトルの本に縫い針、マジックにボールペン、鉛筆、はさみ、模造紙、何に使おうとしているか分からない針金とペンチといった雑木林が目の前には広がっている。いつの間にここは鎮守の森になったのだろうか。

    「楓さんは本当に片づけが苦手なんですね…」

     あんなに掃除は丁寧なのに、と追加で呟いて、一応のフォローはする。

     そんな混沌を浄化しようと、上質な絹で裏ごししたかのような光が空から降り注いでいた。夏の日差しとは違うそれを社務所に導くのは、完成した当時の華やかさこそ失ったものの、まだその存在感を保持している…いや、年を経ることで、ますます力強くなった木の窓枠だった。実家や前に住んでいたアパートの樹脂の窓枠は気がついたら表面がぼろぼろになっていたけど、ここのそれは塗装こそ剥がれていても、むしろそれによって風格が増し、なにか得体の知れない力を纏っているかのように見える………とはさすがに買いかぶりすぎだろうか。

     もう一歩足を進めると、ギイとしわがれた鳴き声が床から響いてくる。その音も、ボロいというより、歴史や風格を彩る一つの重要な要素になっている。最近はこんな音を聞くことも減ってきたと、手伝いにきてくれたおばあちゃんが言っていたのが気になって知り合いの宮大工に聞いてみたら、近頃の家は接着剤でフローリングを固定してしまうから、こういう音とは無縁なのだという。釘で床板を打ち付ける昔ながらの建物ならではという所だろうか。
     にもかかわらず。通ってきた道を振り返ると、さっきの混沌とそれを育むスチール製の事務机が林立し、よく言えば古今東西、悪く言えばまとまりの無い空間が広がっている。
     そんな机に寄りかかりながら、どういう経緯でこれが社務所にあるかを夢想する。まあ、おおよそ氏子の会社であまったとか、新しい机に入れ替えるからとか、そういう理由で献納されたのだろう。応接室に置かれた数々の悪趣味な飾り物といい、どこか先々代の宮司はズレているところがあるような気がする。まあ、この机に限っては先々代の時代に運び込まれたとは限らないのだけど。
     そんな風景から視線を外し、外を見据えながら、既に楓さんによって開かれていたであろう窓口を兼ねている窓の前まで歩いていくと、すぐ近くの木に留まっていた雀が声を上げて飛び立っていった。雀の休憩所になっていた銀杏はいつもと変わりなくそこに立っている。

    「…はぁ」

     意識しないようにと机の上を見てみたり、窓枠そのものや窓の外に意識して視線を向けてたりしていたのにもかかわらず、目は自然とそこに向けられてしまう。
     たとえて言うなら、出汁を取り忘れた味噌汁のような、ミントを乗せ忘れたケーキのような、漠然とした寂しさ、物足りなさ。目の前にある木も、それを絵画に変えてしまう窓枠も、いつもと変わらずそこにあるのに、何か今一つ足りないような違和感。その正体はすでにわかっている。
     いないのだ。
     窓際に置いてあった、近所の親子が作って持ってきてくれた、ぬいぐるみが。
     もう二ヶ月は悠に経つだろうか。幸いと言ってはなんだが、その親子はそれを最後にまだ参拝に来てないから気づかれていない。でも、今度来た時に隠し通せる自信は無かった。

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