こちらのアイテムは2026/2/8(日)開催・文学フリマ広島8にて入手できます。
くわしくは文学フリマ広島8公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【新刊】絞り出しミックスナッツ

  • く-23〜24 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • しぼりだしみっくすなっつ
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 60ページ
  • 300円
  • 2026/2/8(日)発行

  • ……女たらしなら、良かったかもなあ……


     トーキョー・シティ特別区の中学二年生・吹奏楽ブラスバンド部に所属する佐野貴美香さのきみかは、競演会コンクール前の大会で、“兄の出涸でがらし”と言われているらしきティンパニスト少年の噂を耳にした……

     一次創作4本「噂の出涸らし」、「ちいさなおおかみルウのぼうけん」、「倫秋兄様みちときにいさまその後の奮戦記」、「死而後已ししてのちやむ」と、二次的著作物ではない二次創作(『小説BADOMA』続編の前日たん)「友達の引越」の計5本を、それぞれ全てリライト/リバイス/書き下ろして収録。

     === 以下抜粋 ===

     頼山倫秋よりやまみちときかよっている路那るなハイスクールは、トーキョー・シティ特別区内の公立では間違いなく五指ごしはいる学力レベルの高等学校シニア・ハイである。
     十一月の或る放課後、倫秋は、その路那ハイスクール、通称“ルナハイ”のある第八ブロックから最速トレインで三十分じゃくの時間を掛け、第十一ブロックへおもむいた。有名な学校がいくつも集中していることから、別名“スクール・タウン”とも呼ばれる行政区である。
    「済みません、くさ羽辺はべハイスクールって、何番のバスで行けますか?」
     メインストリートである落葉松からまつ通りで倫秋につかまった男子高校生は「草羽辺?」と首をかしげた。
    くさ下部かべじゃなくて草羽辺のほうですか? そっちは此処ここを右にはいって道なりの徒歩五分で行けますけど……女子高ですよ? 日下部なら六十二番のバスです」
    「あー、日下部、はい日下部です。有難ありがとう」
     にこっと笑って応じながら、倫秋は内心で冷や汗をいていた。
    (女子高って、えええ……不覚……紀博のりひろの奴にく前に別の誰かに訊いてみるべきだったか……いや、ウチルナハイの奴らに訊くのはまずいと避けた時点で無理だった……)
     昨日きのうの、弟の紀博との会話を思い出す……。
    『なあ紀博、草羽辺ハイスクールって何処どこにあるか知らないか? 簡易ネットで調べたけど情報が出てこなくてさ……何処のブロックにある高校シニア・ハイなのかな』
    『なぬ。草羽辺?』
     あの時、弟がやけに自分の顔を正面からじろじろ見てくるな、とは思ったのだ。
    『知ってるけど、誰かに用なの?』
    『ああ、友達の友達にって用を頼まれたんでね』
    『……さいですか。スクール・タウンにあるよ。第十一ブロックね』
     弟の口許くちもとわずかに浮かんだ笑みの理由も、今ならわかる。きっと弟は、草羽辺ハイスクールが女子高であると知っていながら教えてくれなかったに違いない。……兄の考えていることなど直ちに見通したぞ、というわけだ。
    (あンのヤロー、帰ったらただじゃ済まさんぞ……)
     ……一般に開放されている簡易ネットでは、特に女子高や女子大の場合、学校側の“安全上の理由”から情報が伏せられ、無許可の野良のら記事さえも検索にヒットしない設定にされていることが少なくない。特に“名門”と呼ばれるような私立女学校側からすれば、「まともな家の女子であればそもそもネット掲載情報など存在せずとも受験して入学してくれるから問題ない、誰でもアクセス出来る簡易ネットに情報を載せるのは百害あって一理なし」という思考になるのである。
    (つまり、あのは、そういう女子高の生徒だったってことかな……ハードル高いなあ……)

         ───「倫秋兄様その後の奮戦記」より

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