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吉岡パーリナイ

  • け-42 (小説|純文学)
  • よしおかぱーりない
  • 切明川準
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 92ページ
  • 500円
  • 股間の玉が女の子へと変貌して、男は孤独でなくなった。これは救いの物語です。
     表題作「吉岡パーリナイ」をはじめ、珠玉の純文学短編全七編。

    【冒頭試し読み】

    『マキモ』
     新しい環境へ身を投じることについて問われ、十年前の一月、僕はこう答えた。
    「自分がどうなりたいかは、まだよく分かりません。これから見つけていきます」
     そして依然、目標だなんて見つけられないままある。
     リーマンショックも口蹄疫も世間から忘れ去られた時勢にあって、それでも馬鹿みたく桜は咲く。バス通りの坂道を下ろし立ての革靴で下って行けば眼下には川が広がる。水辺に沿うよう淡い白色が点々と咲きは誇り、例年と比べ遅い開花だったからか、もう五月も間近だろうにバーベキューを嗜む人々がちらほらと目に飛び込む。新観光名所だとかいう高層タワーが下品な尖塔を生やす。雲ひとつ無い晴天の癖にして空は淡黄色に霞む。

    『酩月』
     椎茸なら断然バター醤油だ。網の上でしっかりと焦げ目をつける方法が主流だろうが、キャンプではいつも遠火で炙ることとしている。湯煎したバターを牡蠣醤油に溶かし、ひだの間から水分が滲み出てきた頃合いで回しかける。後はただ待つ。肉の脂に紛れて甘いバターが香り、これだけで一層酒が進む。焦げる。

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