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文学フリマ広島8出店者
アメシスト(ブース: か-03)
砂の棺・外伝セット
こちらのアイテムは2026/2/8(日)開催・
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くわしくは
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砂の棺・外伝セット
か-03 (小説|エンタメ・大衆小説)
すなのひつぎがいでんせっと
天海六花
書籍|新書判
618ページ
2,500円
https://lyufayran.com
2021/2/21(日)発行
砂の棺・外伝セットは外伝1&2&3(シリーズ③&④&⑤)のセットです。
本編完結から一年後。カルザスとレニーは北の国ミューレンにいた。
新しき地で出会う新しき友と輝かしい希望。
ささやかで穏やかな幸せの日常の中で起こる事件。
だがそれも、「誰か」が夢見た幸せな幸せな物語。
バラ売りはありません(外伝のみ通販でバラ売りあります)
※「Before」の一部ページのノド部分の読みにくさに関しましては、こちらは乱丁ではなく、組版のミスですので、在庫全て同じ綴じのため、交換はできません。(交換しても全て同じです)あらかじめご了承ください。
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野菜とチーズのサンドイッチの周囲には、ミートパイやマッシュポテトのサラダなどが並べられている。普段、接客の空き時間の隙にさっと作る手抜きの昼食に比べれば、遥かに豪盛な昼食だった。
いつもの三人の定席に、今日は一つ余分に簡易椅子を出している。もちろんパルの分だ。
だがパルはその席には座らず、レニーの膝の上にちょこんと座っていた。
「パル。レニーさんのお膝に座ってたら、レニーさんが重いし食事をしにくいでしょ。ちゃんと椅子に座りなさい」
「やっ! パルここがいいの!」
幼児特有のワガママで、パルはレニーにしがみ付く。レニーは苦笑してホリィアンを宥めた。
「ホリィ、いいよ。どうせそっち座らせても、事あるごとにおれに絡んでくるだろうし」
すっかりパルの性格を見抜いているレニーは、彼が膝の上から落ちないように、その小さな体に腕を回して抱え直した。
「すみません、レニーさん。パルはここまでワガママじゃなかったんですけど……」
「仲良しさんでいいじゃないですか」
「カルザスさん。ガキって意外と重いんだぜ。今夜寝てる時に、腹の上にパルと同じ重さの石でも置いてやろうか?」
「わざわざお手間をお掛けするのも申し訳ないので、遠慮しておきますね」
カルザスはさらりと笑顔で受け流し、グラスに冷やした香茶を注いで回った。
「ねぇレニー。これパルがつくったの! たべて!」
パルが少し中身の溢れたサンドイッチを差し出してくる。その崩れ方はたしかに、不器用な幼児が作ったものであることを明確に示していた。
「あっ、形は悪いですけど、味付けはわたしがしましたから大丈夫ですよ!」
ホリィアンが慌ててフォローする。
レニーはパルの手からサンドイッチを受け取り、パクリと頬張った。パルがワクワクしたような表情で、レニーの感想を待っている。
「うん、美味いよパル」
「わーい!」
パルが嬉しそうにはしゃぎ、小さな手を叩く。レニーは手にしていたサンドイッチの残りを口に放り込んだ。
「レニーさんはミートパイは苦手でしたよね? マッシュポテトにも少し香味付けのためのベーコンが入ってるんですけど、大丈夫ですか?」
「少しくらいなら平気だよ」
カルザスにミートパイを切り分け、ホリィアンはマッシュポテトのサラダを小皿に取り分けてレニーに差し出す。
彼女のミートパイをフォークで一口にすくい取り、カルザスはそれを口へと運ぶ。
「美味しいですよ、ホリィさん」
「良かった! どんどん食べてくださいね」
ホリィアンは嬉しそうに、二人の男達に料理を勧めた。
四人の食事が進む内、レニーはふと、膝の上のパルの行動に疑問を抱いた。
レニーに自分が作ったサンドイッチを何度も勧めてくるのだが、彼自身は一切食べようとしないのだ。だが、ホリィアンの作ったミートパイは口の周りをベタベタに汚してまで食べている。マッシュポテトも口にしていない。
「パル。お前おれにばっか食わせて、なんで自分はサンドイッチ食わないの?」
レニーが疑問を口にすると、パルは露骨に体を強張らせた。そして唇を尖らせる。
「パ、パルおなかすいてないもん……」
「嘘つけ。ミートパイばっかガツガツ食ってるじゃん」
「ほんとだもん!」
「パル」
ホリィアンが嘆息しながら、パルの名を呼ぶ。
「レニーさんが心配してるでしょ。正直に言いなさい。野菜が嫌いなんですって」
「偏食か」
「そうなんです」
レニーはパルの口元についた、ミートパイの汚れを拭いてやりながら問いかける。
「嫌いなのか、野菜?」
「……うう……きらい……」
「お昼ご飯を作るって言った時に、最初は自分の好きなハムやベーコンばかり挟もうとしたんです。レニーさんはお肉が食べられないからって何度も言い聞かせて、やっと葉野菜とチーズのサンドイッチに落ち着いたんですよ。だから自分では食べないんです」
ホリィアンは苦笑しながら裏話を暴露した。
「……レニー……パル、わるいこ? やさいたべないとだめ?」
「あー……えーと……」
「好き嫌いは良くないですね。これはちゃんと言い聞かせて教育しないといけませんよねぇ? 食育は大切です」
カルザスが笑いを堪えながら口を挟む。レニーはムッとしてカルザスを睨んだ。
「おれが言っても説得力ないってのを、分かってそういうこと言う?」
レニーはくしゃくしゃと髪を掻き乱し、小さく唸った。
「あー、パル。あのな。パルは悪い子じゃないけど、とりあえずちょっとでいいから野菜は食っとけ。おれも努力するから」
そう言い、レニーはミートパイの一切れを手掴みで口元へと持っていった。そして意を決したようにかぶり付く。
「あっ、無理なさらなくても……」
「パルに食えって言った手前、引くに引けないだろうが」
「ホリィさん、大丈夫ですよ。レニーさんはかなり意地っ張りですから」
「うっせぇ!」
パルは不思議そうにレニーを見つめた。
「レニー、おにくきらいなの?」
「嫌いとはちょっと違うんだけど、沢山は食べられないんだ。でもおれも食ったから、パルも食えるよな?」
「……いっこだけでいい?」
「ああ。一つから始めような」
パルはサンドイッチに手を伸ばし、恐る恐るはみ出した葉野菜を噛んだ。
「パル。レニーさんが見てるわよ」
「ううー……」
葉野菜だけを引っ張り出し、もぐもぐと咀嚼する。そして不安そうにレニーを見上げた。
「おいしくない……でもたべたよ?」
「うん。ちょっと食えたよな。えらいえらい」
レニーは微笑んでパルの頭を撫でてやった。パルははにかむようにえへへと笑う。
「ホリィのミートパイ。ソースの味は嫌いじゃないんだけど、でもおれやっぱ肉類は極力遠慮だわ。肉の食感とか脂がダメなのかねぇ?」
「でもパルさんに格好は付けられましたよね」
「すごい前進です。今までどんなに言い聞かせても、一口も食べなかったんですよ」
ホリィアンが目を細めて嬉しそうに両手を叩いている。〝姉〟として、パルの成長ぶりが純粋に嬉しいのだろう。
「むぐ……ぜんぶたべた。パル、いいこ?」
「うん。いい子だよ。よくがんばった。えらいぞ」
「えへへ」
パルはひと仕事終えたかのように、満足そうな顔をしている。
「よし、じゃあついでにも一個食っちまおうか。パルの作ったやつがちょうどもう一切れ残ってるし」
「やーのー!」
あははと笑いながら、四人の昼食の時間は和やかにゆったりと進んでいった。
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