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【最新刊】空が晴れである限り

  • D-20 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • そらがはれであるかぎり
  • 永坂暖日
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 46ページ
  • 100円
  • 2024/12/1(日)発行
  • 【最新刊】吸血鬼×地球外生命体×SF!の読み切り短編

    人類は初めての地球外生命体と遭遇した。しかし意思疎通は難しく、そのうえ、奴らには人間の血を好むという性質があった。地球外来種として駆除が始まるが、倒すのは困難で人類は数を減らしていった。 人類に形勢不利なまま時が流れたある日、散策に出掛けたリイカは地球外来種に追われていた。もうだめだと思った時、少女を助けてくれたのは迷彩柄のプロテクターを纏った女性だった。ヴィオと名乗る彼女は、地球外来種を倒すため、世界中を旅しているという。何故、何のために? リイカが理由を尋ねると――。

    当サークルの入門にもぴったりな一冊です。
    以下、試し読みです。


     気持ちよく晴れた空の下に、それにふさわしくない音が響いていた。
      死の宣告のように重苦しい音。それに比べると。自分の足音はかわいそうなほど小さく、頼りなかった。それでもリイカは必死で足を動かした。
      彼女は、岩でできた人型の化け物に追われていた。化け物の大きさは、十四になったばかりのリイカの優に三倍はある。化け物は手も足も長いが、長い故に、素早くは動かせないらしい。リイカが額に汗を浮かべながらも逃げられるのはそのおかげではあったが、化け物との距離は少しずつ縮まりつつあった。
      編んでいた黒髪はいつの間にかほどけて、走る勢いと風にもてあそばれてぼさぼさだった。けれど、リイカにはそれを気にする余裕がなかった。
      目尻からこぼれる涙を、風が無慈悲にさらっていく。化け物が無造作に伸ばした手で、彼女の頭上に影が落ちる。より近付いてきた化け物の足音も相まって、死への恐怖が否応にも膨らんでいく。走り続けてきたせいで、体力の限界にも近付きつつあることを、リイカは嫌でも感じていた。  周囲には人影どころか、町もない。助けなど期待するべくもない。
      もうだめだ――絶望的な気持ちで、すべての終わりを覚悟した時だった。
      甲高い雄叫びが頭上から降ってきた。直後、何か重く大きな物が砕ける音と、崩れ落ちる音がリイカの鼓膜と体を震わせる。  振り返り、リイカは目を見開いた。走る勢いが自然と弱くなる。
      さっきまで彼女を執拗に追いかけていた化け物の胴体にぽっかりと穴が開き、体をのけぞらせていたのだ。長い足は動きを止め、両腕をだらりと垂らしている。
      何が起きたのか分からず、リイカは何度も目をしばたたかせた。そして、化け物の向こうに、化け物とは違う、人型の異形がいるのを見つけた。
      異形とはいうものの、化け物に比べればずっと小さい。大柄な人くらいだ。泥と岩ではなく、機械でできたロボットのように見えた。
      高いところから飛び降りた後のように片膝を突いてしゃがんでいたロボットが、おもむろに立ち上がる。その時点では、化け物に背を向けていた。けれど、リイカが息を吸うよりも早く、化け物の足に回し蹴りを食らわせる。  左の足首を砕かれた化け物は、背中から地面に倒れた。その直前に、ロボットは化け物から離れて、跳躍する。どうするのかとその行方を目で追うと、ロボットは右足をまっすぐに伸ばし、化け物の喉元につま先を食い込ませた。  落下する勢いとロボットの重量で、想像していたよりも大きな衝突音が上がり、岩の欠片が飛び散る。仰向けに倒れていた化け物の体が大きくはねた。
      攻撃してくるロボットを振り払おうと、手を振り回す。しかしロボットは化け物の体に密着するように身を低くしてそれをかわし、まだ胴体と首とを繋げている喉を、右手で掴んだ。
      強い風が吹き抜けるような音が響く。  体をのけぞらせて、化け物が悲鳴を上げているのだ。
      化け物の悲鳴を聞くのは初めてだった。それなのに悲鳴と分かったのは、生き物が命の危機に放つ切迫感に満ちていたからだ。
      悲鳴はすぐに小さくなり、聞こえなくなった。のけぞっていた体は地面に沈み、体を構成する岩はさらさらと崩れて、砂に変わっていく。リイカの髪をもてあそんでいる風が、同じように砂をさらっていく。
      声も出ない彼女の前で、ロボットが立ち上がり、こちらに向き直った。
      口と鼻はないが、横長の長方形をした目はあった。目、というか、人間であれば目がある位置に、長方形があった。うっすら白く光っている。
      化け物を倒してくれたようだ。だけど、果たして味方なのだろうか。それとも、命がけの追いかけっこを、再びしなければならないだろうか――。
     「大丈夫? 怪我はない?」
      ロボットは手を差し伸べて、そう言った。機械を通したような響きだが、思いの外、声音は優しい。
      緊張の糸が途切れて、リイカは意識を手放した。



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