前から読むと短編集、天地ひっくり返して後ろから読むとBL落語? の、お得な両A面本です。
〈短編集 青年青女〉
【載せてよGoogle】
ピザ屋もコタもみんちゃんも、この部屋に辿り着けない。メッセージアプリを閉じて、Googleマップを立ち上げる。マップ上であたしを示す青い丸は、何にもない空き地のど真ん中にいる。壁もメゾン白鷺の表札もないまっさらの空間であたしは蹲って泣いているのに、誰にも見えない辿り着けない。Googleマップに載ってないから。
【亀の葬列】
レジ袋の包みの中には、土の詰まった透明な食品用コンテナが入っている。それは、亀の棺だ。私のスカートに覆われた右腿と左腿、それぞれに一つずつの、亀の棺が並んでいる。私は今日、かれらを埋葬する。
【かざはな】
別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。”
SNSのおすすめTLをスクロールしていたら、そんな言葉が目に留まった。川端康成大センセイのお言葉らしい。
毎年私のことを思い出してしまうでしょう? なんてロマンチックな企みなんだろうが、今の俺には実用的なライフハックだ。別れる男はいないが、別れそうな女はいる。
【鱗】
坊ちゃん、私はあなたの鱗を剥ぎました。虹色の鱗を剥いだ途端、その部分だけ肌が滲んだ血でカーマインに変わって、それはそれは美しかった。全ての鱗を剥いだ時、あなたの下半身は人間そのものになりました。
【hakka】
ゆっくりと振り返った。寝巻にしている、高校のえんじのハーフパンツを着た、私がいた。窓から入る光のおかげで、腰から下だけが見える。
「大丈夫、許さないよ」と、ハーフパンツの私が言う。
「許さないでくれるの」
「許さないでいてあげるよ。誰が私を許しても、全部許さないでいてあげる」
「殺してはくれない?」
「殺さないよ。その代わり、許さない」
***ここから自由演技***
「おとしばなし」
まだ付き合ってない2人組レオ(19)とたっちゃん(29)は、町内会の秋祭りで迷子落し物係に任命される。
第1話
暇する2人のもとにやってきた迷子は「トウキョウリンカイコウソクテツドウリンカイセンのシナガワシーサイド駅と、ジェイアールケイヒントウホクセンのタカナワゲートウェイ駅の中間地点にあるプレミアステ― ジパークハイアットグランドオーシャンレジデンツトウキョウタカナワゲートウェイ」に住んでいて……
第2話
共通の友人で強火たっちゃん推しの女子・ルイが助っ人にやってくる。ルイとレオは「もし宝くじが当たったら、たっちゃんのためにどう使うか」という妄想で議論する……
第3話
思いがけずあぶく銭を手に入れたレオとたっちゃんは、祭りの出店巡りに繰り出す。各々買い歩いて待ち合わせの神社に向かうたっちゃん。そこにいたレオはいつもと様子が違っていて……