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【委託】イリエの情景〜被災地さんぽめぐり〜1

  • え-15 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • いりえのじょうけいひさいちさんぽめぐり1
  • 今田ずんばあらず
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 240ページ
  • 1,000円
  • https://goo.gl/LDXWTK
  • 行こう、旅、被災地!


    2016年、8月。
    東北の被災地を旅するのは20歳の女性ふたり。ひとりは震災を知らない依利江。ひとりは震災を識っている三ツ葉。
    震災から5年、ある程度は復旧しているだろうと思っていた依利江の眸に映ったのは片足の自由の女神、津波に呑まれて鉄骨だけになった防災庁舎──震災の大きな爪痕だった。
    綿密な取材の元に描いた被災地をめぐる青春ロードムービー、ここに開幕!

    ◆サークル主ひじりあやのレビュー
    『イリエの情景』は東日本大震災の被災地を旅する物語です。 作者である今田ずんばあらずさんは関東出身で、あとがきによると今田さんが初めて東北に足を運んだのは2013年8月、震災から2年半近く経ってからだったそうです。
    この作品は、被災者ではない今田さんの「2つの目」で描かれています。1つは、はじめて被災地を見て回ったときの目。これは主人公である依利江の目を通して、震災、津波の爪痕を目の当たりにした衝撃を生々しく描いています。もう1つの目は、被災地を知った後の目。こちらは依利江の親友であり、物語のナビゲーターである三ツ葉を通して描かれます。

    あとがきで元々は紀行文を書こうとしたと語っている今田さんですが、目の当たりにしたものの衝撃が大きすぎて書けなかったそうで、未完成の紀行文をフィクションに仕立て直し、今田さんの「2つの目」を依利江と三ツ葉に託して描いたものが、この『イリエの情景』の1巻になります。
    ですから2016年に存在しない自由の女神が石巻に建っていたりして、被災地を知っているひとであれば不自然さを感じる内容になっています。けれどそれは事実の正確性よりも、紀行文としての、今田さんが目の当たりにした衝撃を描くことが優先された結果です。それが良い悪いは別として、『イリエの情景』は震災を知っているひとよりも、震災を知らない、これから知っていきたいひとへの入門書のような物語になっています。
    関東在住で震災を経験しなかった今田さんと、同じ立場のひとに読んでもらいたい作品です。

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