路地裏のカフェのように、
心にふと立ち止まる時間を。
お題から生まれた即興、短編詩を収録。
お好きなページへお座りください。
銀色スプーンを滑った君がほほ笑んでいた気がしたから、
そっとすくってカップへ沈めてくるりと回した。
そのときの僕がどんなかおをしていたかしれない。
見つかってはいけないような、
目にとまった鮮やかな花びらをわけもなくポケットにしまったような心地がした。
溶けていく、
かすかな渦の水底に君がいる。
はちみつのようなとろみを与えて、
もうそこから消えることはなくなってしまった。
それが僕には取り返しのつかないことに思えて、
薄氷の上に置くように指先を離した。
水面にゆれる僕ごと飲み干してしまえたなら、
きっとここにはちいさな花が咲く。
水を与えなくても陽にさらさなくとも
風に揺られながら
ずっと誰かを待っている
もの静かな花が 咲いてしまう
『勿忘草』