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ガングリフォンTRPGリプライノベルOAU編

  • 南1-2ホール | D-19 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • がんぐりふぉんてぃーあーるぴーじー
  • ゴリラ
  • 書籍|A4
  • 55ページ
  • 1,000円
  • https://www.pixiv.net/users/4…
  • 2026/5/3(日)発行
  • ガングリフォンVel リプレイ要約 OAU陣営編

    ──空を飛ぶ戦車に恋した男の話

    2015年、元日。

    ソマリア。オールドモガディシュ。

    夜明け前の港湾に立っていたあなたは、生ゴミ入りポリバケツを頭からかぶった色黒の背の低い男に突然ぶつかられ、転倒させられ、「俺をかくまってくれ!」と強制的に立たせられ、気がつくと鉄パイプと拳銃を持った男たちに取り囲まれていた。

    男は消えていた。

    代わりに現れたのが、漢服とフェドラ帽と赤い竜の刺繍。底の見えない琥珀色の瞳を持つ男、リカド・ワン。

    「言わない? それとも言えない? まあいいでしょう。あなたは……ちょっと運が悪かった。大丈夫、苦しまないようにしてあげます」

    拳銃が構えられる。

    そこへ。

    倉庫の壁をぶち破って飛び出してきたのは、全高10メートルを超える巨大な二足歩行戦闘車両、HIGH-MACSだった。

    胸部のポケットに乗っているのは、あのポリバケツ男だ。

    「グハハハハハハー! こいつはオレ様がいただくぜ! この盗っ人どもめ、踏み潰されろォ!!」

    モヒカン刈りのスパイクアーマー野郎たちがバイクで市街地になだれ込む。エチオピアの武装民兵がハーフトラックで突入する。白い石積みの家々が両者に粉砕される。中国製の13式歩行戦車がガトリング砲を回転させる。

    そして、HIGH-MACSのエンジンが本体から分離して空のかなたに飛んでいった。

    そんな戦場のど真ん中に、フリルつきのブラウスと太縁眼鏡と青いリボンをつけた一人のイラン出身の男性(外見性別女性、身長160センチ弱、体重40キロ)が、両手で頬をはさみ目をキラキラと輝かせて立っていた。

    名前はラヒール・アル=ファイヤード。21歳。趣味は鹵獲兵器のコレクション。

    「あはぁー、ああっちにあるのはァじゅうさんしきでェ! 中国軍の量産型AWGSの改造品だわね! んであっちにあるのはトヨタのランドクルーザーをロシアの対空機銃座に魔改造した殺人兵器で、あっちにはRPG7をシリアで違法密造した偽物のロケット弾を鉄パイプで固定した謎兵器! あそんであっちにあるのはァー!」

    戦場である。

    ラヒールが次のコレクションとしてロックオンしたのが、今まさに空のかなたに飛んでいったHIGH-MACSだった。

    「あの子を助けに行くよ! 翼の折れたボクのフォルクスパンターちゃん!」

    初対面のラヒールの熱量を全身で受け止めながら、謎の幼女ガラヤカ(正確な名はアイーシャ・イブ=ハイヤーン。紫色の瞳の持ち主)が言う。

    「ンなにくそーっ」「なあーっ!!!」

    一方は夢に向かって前だけを見ながら。もう一方は肩に担がれながら後ろを向いて。

    二人は瓦礫と化したモガディシュを、モヒカン野郎とエチオピア民兵と13式歩行戦車を引き連れながら駆け抜けていった。

    その頃、先行していたリカド・ワンは子供たちの頭を撫でながら、なにかを企む子供のように笑っていた。

    この混乱の全部が、リカドの手配した茶番だったのだ。

    なぜか。

    フォルクスパンターを起動するためのミッションキーが必要だったからである。そしてそのキーの持ち主が、この騒動に釣られてこの地にやってくる。リカドはそのように手配していた。

    どうやら、ラヒールが実家から持参したミッションデータカートリッジがそれらしかった。

    墜落したフォルクスパンターに単身よじ登ったラヒールは、コクピットに滑り込むと恍惚とした顔で計器類を撫で始めた。

    「綺麗な計器表示だねぇー、もっと自分のカラダに正直になってみようよぉぇっへへへへ……」

    計器を愛撫した。

    「ここかぁー? ここがええのんかぁー?」

    トグルスイッチを愛でた。

    「Ahh… du bist… sehr schlimmer Perverser, ja…(イランなまりのドイツ語で、やさしくえっちなことを言っている)」

    フォルクスパンターの全身がびくりと動き、各種センサーが小さな電子音を鳴らし、機体がブルブルと震えはじめた。

    やがてディスプレイに緑色の文字が浮かぶ。

    「EINSATZBEREIT(戦闘準備完了)」

    「بیا، ببریمش خونه.(さあ、持って帰るぞ)」

    ラヒールの覚悟は本物だった。父の屋敷の檻の中で、欲しいものは何でも買い与えられながら、本当に欲しかったものだけは何一つ手に入らなかった男の話。自由の話。夢の話。

    だがそこへ、装甲板を手で押さえながら顔を出したのがリカドだった。

    「おかえり、ラヒール!」

    ガラヤカもそこにいた。

    ラヒールは機体の外にほっぽり出され、ガラヤカの白い粉を顔面いっぱいに吸引させられ、視界が回転し、天と地の区別がなくなり、前と後ろが曖昧になり……

    夢の中で、ラヒールは空を飛んでいた。

    すぐ隣に、まっしろな雲を一筋まっすぐに伸ばして飛ぶフォルクスパンターがいる。もう少しで手が届きそうな距離なのに、なかなか手を伸ばせない。

    ラヒールは懸命に手を伸ばした。

    「過激派へようこそ、ラヒールくん」

    紫色の瞳をきらりと輝かせ、ガラヤカはニヤリと笑った。

    ガラヤカを背に乗せたまま、ラヒールは空を飛ぶかっこうのままくるくると回り続けていた。

    世界が四つに割れた。国連は機能を停止した。ソマリアは事実上の試作兵器試験場と化した。

    そんな世界の底で、兵器オタクのお金持ちの男の子(外見女子)が二足歩行戦車に恋をした。

    爆発が彩る。モヒカンが吠える。幼女が謎の粉を投げつける。そして誰かがずっと、舞台の裏で糸を引いている。

    読んでいるうちにどこが戦場でどこが日常なのか、どこからが悪でどこまでが夢なのか、境界線がわからなくなってくる。

    それがソマリアというものだ、とガラヤカは言うだろう。

    テーブルトークRPG「ガングリフォンVel」リプレイより。OAU陣営編 第一章収録。



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