第三次世界大戦が勃発した2015年の日本。食料配給の列が伸びる荒廃した街で、ギャング風の痩せた青年・阿野佳は、謎の金髪筋肉男にしつこく目をつけられていた。
その男の名は若宮康光。日本外人部隊の上級軍曹にして、戦車の砲身を素手でバットのように担ぐ人類の限界を超えた生命体である。
若宮は阿野にスカウトの声をかける。阿野は当然ぶち切れる。
追いかけっこが始まる。木の樽が坂を転がる。装甲車が民家の壁をぶち抜く。警察が包囲する。9式二足歩行戦車が出動する。HIGH-MACSまで緊急発進する。一人の不審者を捕まえるためだけに。
最終的に阿野は、10メートル級の対戦車砲を肩に担いだ若宮に向かって、着陸直後のHIGH-MACSの衝撃波を利用した跳躍からの拳パンチをぶち込むことに成功する。格闘スキル70の真骨頂である。
しかし9式のマニピュレーターに両者まとめて鷲掴みにされ、師団長室へ連行される羽目になるのだった。
なお若宮が阿野の自宅まで出向き、手書きの「せいやくしょ」を両親に書かせていたことが後に発覚する。
時は流れて翌月。北海道・千歳の基地。
あの騒動からなんやかんやで日本外人部隊に放り込まれた阿野は、若宮に首根っこを掴まれてHIGH-MACSシミュレーターに座らされていた。説明は最小限。武器は120ミリ滑降砲のみ。敵は9体。
「乗れ!試せ!戦え!走れ!跳べ!撃て!以上!」
これが訓練の全容である。
阿野はまず操縦方法を知らない。フットペダルを踏むと機体が回転した。トリガーを引くと砲が轟音を立てた。それだけで阿野は「だいたいわかった」と判断し、スロットルを全開にして空を飛んだ。
意図せず。
そのまま重戦車に跳び蹴りをかました。胴体をひねり、片足を畳み、もう片足をまっすぐ伸ばし、着地の瞬間に残心のポーズまでキメた。10メートル級の戦闘ロボットで、である。
観戦していた若宮が初めて言葉を失った。「ジュードーとかアイキドーをやってるんじゃないんだぞ」と。
当然ながら自機の脚部は全損した。
以降の阿野は、脚の壊れた機体を引きずりながら、異様なオーラを放ちながらパンター歩行戦車に「格闘させろぉ……」と呟きながら近づき、怖気づいた相手を相撲の「掴み上げ」で転倒させてから120ミリ砲を背中にぶち込む、という人類の格闘本能とテクノロジーの奇跡的な融合を見せ続ける。
なお阿野の単発銃スキルは0である。
クライマックス、最終ターゲットの敵HIGH-MACS「ヤークトパンター」と対峙した阿野は、廃ビルの天上で機体ごと体当たりをかまして相手を転倒させ、120ミリ砲をコクピットに押しつけてトリガーを引いた。そのとき阿野は「一瞬だけ、すこし抵抗感があったような気がした」。
だがすぐに「よし次ィ!」と言った。
制限時間切れ。機体の操縦権が強制剥奪される。阿野は地面に叩きつけられ、シミュレーター席の中で泡を吹いて気絶した。
世界が戦争をしている。食料が足りない。憲法が書き換えられた。空飛ぶ二足歩行戦車が町を歩いている。
それでもこのリプレイの空気は、どこか青春の匂いがする。怒鳴り続ける阿野と、バカみたいに笑い続ける若宮と、それを遠くから見守る悠木映と。
「戦士ってのは、最後まで立ってた方が勝つんだろう?」
阿野のオラつきの行方は、誰も知らない。
テーブルトークRPG「ガングリフォンVel」リプレイより。全2話収録。
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