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束ねれば花束

  • 南3-4ホール | そ-50 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • たばねればはなたば
  • うすいはるか
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 52ページ
  • 500円
  • 2026/5/4(月)発行
  • 来なかったバス、胸を打たなくなった音楽、そばにいないのに離れないひと、雨にも雪にもなりきれない三月のみぞれ。
    思い出すこと/言葉にすること/失われていくことのあいだにある、触りきれないものを描いたエッセイ四本を収録。

    【本文より】

     思っていることをそのまま言葉にする、それだけのことがなぜこんなにも難しいのだろう。心と口は、なぜいつもこんなにも遠いのだろう。想いをひとつの言葉に託すということは、ほかの無数の言葉を手放すということだ。
    (「軽やかな諦め」)

     いまの私は、共感がこわい。重なった気がしても、たいていはただ重ねただけだ。感情を横取りするような、その横暴さ。
    (「あの娘わたしがTSUTAYAに行かなくなったと知ったらどんな顔するだろう」)

     それきり私たちは言葉を放棄して、訪れた静寂に体を浸した。そのうち忍び寄るように、この沈黙に意味が伴うだろう。こんなにもなにもないのに、あとから感傷的な景色に書き換えられてしまう予感があって、おそろしかった。
    (「きみはあなたのことではない」)

     立ち上がって箪笥をあけると、桜色のカーディガンを持ってそばへ戻った。それをあなたの肩にかけたとき、その体の薄さにはっとして、また新鮮に狼狽える。
     私は笹舟が沈むところを見たことがなかった。それはどれほど静かな沈没だろうか。
    (「水際」)

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