詩人・諸戸琴環の日本語の詩が、英語に、ドイツ語に、スウェーデン語に、スペイン語に——海を越えて、7人の翻訳者の手で書き直された。
タイトルは「objets trouvés」、フランス語で「見出された物」。誰かの眼差しによって価値を見いだされ、新たな意味を帯びる物体のこと。詩人が日常に落としていった言葉を、異なる言語と文化圏に生きる翻訳者たちが拾い上げ、それぞれの手で読み直す——そのような過程の記録です。
翻訳者はInstagramで繋がった海外フォロワーたち。ニューヨークのアーティスト、ストックホルムの舞台美術家、カリフォルニアのバンドマン、メルボルンのミュージシャン。彼らはスプレッドシートの上で詩を「拾い」、解釈を書き、複数のバージョンを重ねながら、自分の言葉で詩を書き直した。
翻訳とは、詩の手つきで編み直される言語のエチュード(習作)。完成には至らない。けれど、残されたものは、作者と別の温度の宿るタブロー(作品)にもなる。
本セットには、多言語翻訳詩集「OBJETS TROUVÉS」と、翻訳者たちのコメント・解釈・やり取りの痕跡を収めた別冊「痕跡」を同梱しています。詩集には英語・ドイツ語・スウェーデン語・スペイン語の翻訳詩と、日本語原詩を収録。別冊には、本編には収まらなかった翻訳の過程——翻訳者が書き記した長文の解釈、スプレッドシート上に残されたやり取り、Ambroseからの手書きの手紙——が残されています。
作品とは、作者がかつてそこにいたという痕跡です。詩はただ置かれ、その温度は作者から離れていく。拾った誰かに、別の温度が宿るとき、はじめて別の作品が生まれるのだと思います。