Gaumarjos!
カズタモモエ
〈目次〉
たまご
BIG FLOWER WAR
Gaumarjos!
辰砂
〈試し読み〉
BIG FLOWER WAR
《低温夢》
水の流れに漂う青年の体。
循環機能を復旧させている音を叩いている機器類。わずかに高まった心拍と共に、電子パルスが水中を震わせた。
ゆらゆらと青年の体は、おびただしい気泡を生じさせながら、漂っている。
水中――バスタブのような、水槽。
全身凍結保存からの蘇生。通称「極低温スリープ」は、理論上、細胞内の氷晶形成最小限に抑え、組織損傷を防ぐ技術だ。だが、いくら理論値を重ねても、現実の蘇生率は三十パーセントを超えない。
つまり、十人凍らせておいて、まともに目を覚ますのは三人。
とかいいながら、こんな奇特なことやるやつなんて、ほとんどいない。
「ラッシュ、早く起きろよ」
それでも、賭ける価値があると思えるようになったのは、つい最近の話だ。というより、誰かが死ぬか死にかけた後じゃなきゃ、こんな装置使う気にもならない。
残り七十パーセントの死者たちと同じように、彼の命も水に溶けようとしている。
すでに、超低温から解凍されたその体は、ナノ流体に満たされた再生水槽の中で、静かに循環系の再始動を待っていた。
皮膚には白金触媒を組み込んだナノボット郡が編み込まれている。極小サイズの自己駆動型ボットは、血管壁に沿って泳ぎながら、毛細血管の再接続と神経修復に従事していた。マクロファージの形態を模しているが、性能は足元にも及ばない。未だに誤作動率が高いし、免疫系と干渉すると拒絶反応を起こすリスクもある。