夢を商う奇妙な女と彼女を訪ねる人々を描いた読み切り短編集。
彼女に夢を売れば、売った夢はその人の未来から消える。
彼女から夢を買えば、買った夢はその人の未来になる。
そして夢は、売られた夢の内容を寸分違わず語ることができた時のみ、買うことができる。
悪夢(あしきゆめ)を売り、吉夢(よきゆめ)を買う人が訪ねるところ。
それが夢解きの棲む夢観洞……
『宇治拾遺物語』巻13の5「夢買ふ人の話」より着想した、夢に惑い、夢に導かれる人々が織りなす4篇の物語。
以下収録編のご紹介です。
・夢売人
「なあ頼む、後生だから助けてくれ。俺の夢を買ってくれ」
私の目の前にうずくまるこの男は、私に夢を売ろうとしている夢売人だ。男の見た「自らが燃え尽きる夢」が示すのは、はたして悪夢か吉夢か。
・ほら女
「谷底の洞には『ほら女』っていう化け女が住んでいて、会ったら夢をホラにされるんだって」
山寺に拾われた少年は、少し先の未来を夢に見ることができた。そして少年には、嘘にしたい夢があった。
・宵待人
宮中の姫が夢中の貴人に心を傾げ、縁談が進まず困り果てているとの便りを受け取った私は、都へ向かうことになった。
しかし道中に宿った寺で吹雪に遭い、足止めを食うことに。
その晩、私の房に小さな声が聞こえた。
「もし、もし。おられますか」
・月の君
夜の闇の中、小さな手燭の灯りを受け淡白く光るその貴人は、地に佇む月のようだった。
そしてそれが、私が見た彼の最後の姿だった。
こんな宵には、どうしても思い出してしまう。
かつて私を訪ねた、月の君のことを。
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