かざりは、じゃれて遊んでいる猫の前足で何度も揺らされた。そして最後には引っかかれてあっという間にびりびりになった。それを満足そうに眺めたあと猫はわたしをちらっと見て、目をまんまるくしてから窓の外に飛び出していった。そして裏庭に生えているいちじくの木の下にじっと立ち止まってこちらを見ていた。
「どうしたの?」
大きな葉っぱがゆらゆらと揺れて、葉の影が猫の顔にかかっている。
もしかしてわたしが怒っていると思っているのかな。それなら誤解を解かなくちゃ。
「ねえ、わたし怒ってないよ」
わたしは窓からすこし顔を出して、できるだけ大きな声で言った。
「あなたが楽しそうに遊んでいるのが見られて、わたしも楽しかったよ」
すると猫はニャーニャーと鳴き声をたてて、そのままローズマリーのしげみの奥に行ってしまった。
(本文より抜粋)