〈植物迷宮シリーズ〉
津原泰水文章講座の有志による冊子『文章講座植物園』に寄稿した『六月の庭』をもとにシリーズ化しました。
窓から庭を眺めていると、ふと植物からの視線を感じる瞬間があります。もしかすると、人間の思惑を超えた植物の反応に絶えず晒されているのかも知れません。感知する術はあるのでしょうか。そんなことを考えながら書いております。
〈常夢の葉月〉
俺は思わず身をひいた。彬さんが獣に変化して躍りかかってくるのではないかと思ったのだ。それでも逃げ出しはしなかった。彬さんの牙にかかるなら、蠱惑的な人生の終わり方だ。
シリーズ第2作。
山野辺譲司(やまのべじょうじ)と伯父の修一(しゅういち)、そして伯父の養子彬(あきら)さんの3人は譲司の祖母千夜子(ちやこ)の先輩で修一と弟の雅彦(譲司の父)を幼い時から可愛がってくれた能見桜子(のうみさくらこ)の邸宅で夏を過ごすことになった。屋敷の主である能見桜子は出身校の聖コロンブ学園の卒業生に屋敷のスタッフとしての仕事を提供している。都内の高級住宅街の一画を占める豪奢な能見邸を囲む林を彬さんと彷徨ったあとで、譲司は夢に酔う。
桜子の遠縁にあたる片瀬國温(かたせくにはる)が能見邸にやって来た。片瀬は恋愛関係にあった千夜子が自分に財産を遺しているはずだと主張する。
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