――氷河期の青春を、「古都」京都と、星空の美しい田舎町に刻む三つの物語。
二〇一〇年三月、東日本大震災の一年前。
28歳の「僕」と25歳の恭子の同棲生活は、京都の春と共に始まった。看護師の彼女に支えられながら、IT(情報科学)には全く無関心に生きてきた青年は、公務員試験の年齢制限を前に、国家資格「情報処理技術者試験」に挑戦することを決意する。
病と不安、氷河期世代、リーマンショック――時代の逆境に揺れながらも、青年は「生きる」ことを選び取る。
個人の歩みと歴史の断層を交差させ、京都の風景に青春の変遷を織り込んだ短編小説。
星空の美しいこの田舎町の精神科閉鎖病棟では、『労働療法』という治療法が導入されていた。広大な敷地での畑作労働を通じて、人は生まれ持った活力と社会性を回復すると信じられていた。
そこで療養生活を送っていた「僕」の前に、大学時代のバンド仲間・田島敬子が偶然入居する。
精神病棟という重い舞台を、明るい未来を夢見る若者たちの姿で軽やかに描き出す、原稿用紙50枚の短編小説。
小学生からエレキギターに親しんでいた省吾は、中学進学を機に軽音楽部へ入部しようとする。
父の形見である Fender の純正ハードケースを携えて意気揚々と体験入部に臨むが、その「中学生には不釣り合いな立派さ」が、先輩たちの反感を買うことになる――。
父不在という不条理な背景の、少年の青春の一幕を切り取った掌編。
本書は、『京の春』『矮星たちのから騒ぎ』『省吾のギター』の三篇を収録。
個人史と時代、病と青春、音楽と継承――それぞれ異なる光景を描きながらも、「生きる」という一点に収束していく短編集です。