「猫屋奇譚 鬼にあふこと」
俺が人間のそれも陰陽師にお願いをするなんて初めてだし、最後だと思う。
3話収録 正月に起こる良き事、桂花、竜胆。
鬼に関連した短編2話書下ろし、再収録の竜胆になります。
正月に起こる良き事より抜粋
その重箱を見たのは三月も中旬に差し掛かった暖かい日だった。
ちょっとした用事を済ますために駅への道を歩いていた僕は、重箱を抱えた青年とすれ違った。
小さな漆塗りの三段の重箱は側面に梅の花が描かれていて、風呂敷に包みもせずに重箱そのままを持っている。
それでも青年の片方の手には薄い白地の蓮模様の風呂敷が握られていて、一応は包もうとしたらしい感じがする。
「急がなければ」
青年はかなり急いでいるらしく箱はカタカタと音を立てて軋んでおり、まるで風を切るようにあっという間に遠ざかったのが印象に残った。
世界観・時間軸は前回の新刊「猫屋奇譚 百鬼夜行」に収録した「鬼にあうこと」の続きになります。
短編の連作なので百鬼夜行を読まずとも話は通じますが、出来れば百鬼夜行の「鬼にあうこと」から読んでくださると嬉しいです。
猫屋奇譚試し読み
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