東京都町田市──バリケードで封鎖された「16メーター道路」の先に、夜な夜な現れる暴走族。その走りに憧れて、自転車で山道を駆け上がる中学二年生・高藤哲治。
成績は落ちこぼれ、父親とは反りが合わず、母の過剰な干渉にも疲れていた。「なんでオレだけ、こんなに怒られなきゃいけないんだ?」という理不尽と鬱屈が、彼の思春期を包み込む。
本作は、1978年の多摩ニュータウン開発が進む町を舞台に、"家"の中で行き場をなくしていく少年の姿を克明に描いた物語である。バリケードの向こうに広がる暴走族の自由、夜空に響くマフラーの爆音、そして何より愛犬シュヴァルツのぬくもりが、彼の魂をかすかに震わせる。
家族と社会の"理想像"にすり潰されていく少年の痛みと、誰にも知られず踏みとどまったあの夜の記憶。昭和という時代の空気とともに、今を生きるすべての「かつての子どもたち」に問いかける。
これは、「バカにされた記憶」をまだ棄てられずにいる、すべての人に贈る青春小説である。
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