『サヨナラと、今日も言えない毎日で。』
母の葬式では、黒い喪服の人が長い列を作り、会場は線香の煙で立ち込めている。
平均寿命が今よりもずっと伸びた世界。生前の母との会話を思い出し、娘は一つの決断をする。
「誰か、気がつくかしら? ううん、きっと大丈夫」
『すれ違い電話』
大学生の夏休み、一週間だけ、おばあちゃんの家で過ごすことになった私。
「二人きりの生活は戸惑いはあるけれど、認知症のはじまったおばあちゃんと向き合う『最後の時間』になるかもしれない」
そう思っていたのに、おばあちゃんは孫のことなんかよそに、友人知人に電話をかけてばかりで……
『ネコの乳歯』
万屋の男のもとに来たのは、「ネコの乳歯を探して欲しい」という依頼。
一体、誰が何のために? ネコの乳歯とは?
きらりと光る三日月型の歯が、特別、愛しく思える理由は——
『リベンジ・ラブレター』
元カレから手紙が届いた。「もう一度、僕にチャンスをください」という。
SNSをブロックして、電話を着信拒否にしたら、郵便受けでの不思議な文通が始まって、過去の言いたかった言葉が精算されていく——
と思っていたら、最後に訪れたのは……?
『おいしい気持ち』
「あんな理由で離婚するなら、最初から結婚しなけりゃよかったのに」
両親は“味の好みの違い”が原因で、食卓ではケンカばかり。ミキオは気付けば味覚がなくなっていた。
そんなミキオがなぜか自ら、料理部の沙織の「コンテストに出すお菓子の味見役」に名乗り出てしまって……
味がわからないのに、一体、どうする!?
『デザインされてない僕ら』
岡本聡は、人生をデザインしたい。自堕落で男に騙されてばかりの母親のようにはなりたくない。
日々のルーティンは決まっていて、成績優秀、人生設計に余念がない。
けれど、美術専門高校の受験対策を指導してくれるはずの美術教師・志木謙太郎は、どこまでも適当で……
中学生の少年の青い世界が、マーブルのように不思議に歪む。
『ビター・イメージ・チェンジ』
「イメージ・チェンジ」って華やかでわくわくするものばかりじゃない。
変わりたいのに、うまく変われない。今のままは嫌なのに、どうやって変わればいいかわからない。
私のイメージチェンジは、いつも苦い……
「この日」だから、鏡の前で思い出すこと。
『冷蔵庫の中で腐っていく果実』
冷蔵庫の中で冷やされながら、だけどじわじわと腐っていく。
一見変わっていないように見えて、内側から崩れていき、変質していく。
彼と私の関係性は、いつも間にか、そういうものになっていた。
冷蔵庫の中で腐っていく果実を、最後に、あなたはどうしますか——?
『大人メーター』
お父さんは、好きなこと仕事にして、船で漁に出たら月に一回しか帰らない。育児も家事もお母さんに任せっぱなし。
帰ってきても自分の自慢話で、我慢するのは、お母さんばっかり……
胸のざらつきを全てぶつけてみたけれど、心は海の波のように揺れて——
大人になりきれない、健気さを、やさしく包みたい。
『結婚後夜』
プロポーズの翌日、私たちは大喧嘩をした。
「新婚」も「同棲初日」も、全然思ったのと違って……
最上階のレストランで食事をして、大きな花束とキラキラ光る指輪を贈ってくれた『結婚前夜』。
そこから、私たちの『結婚後夜』が始まる。
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